視覚障害者になってから、いろいろなことに貪欲になった気がする。それまで仕事一筋の、ただ職場と家の往復だけだった日々からは考えられない。働き方改革とか言われ、それまでの自分の「一生懸命さ」を否定されたような気がしたところへタイミング良くコロナ禍。あれもやめ、これもやめ、と言われるがままに捨て去った。身体も悲鳴を上げていたのだから丁度良かったのだ。これからは自分のための時間の使い方をしようと思い立ち、始めた矢先に目が見えなくなり、車の免許も取り上げられた。電車とバスでの移動を強いられるが、これはこれで結構楽しい。白杖を突いているとは言え視力ゼロではないから、まだまだ観て楽しむことができる。楽しみだしたことのひとつが「観劇」。ヒデキ感激!のかんげきではないぞ。ひたすら我慢していたオーケストラや歌舞伎などの高額な趣味を遠慮なく出かけるようにした。それこそ北九州まで銀河鉄道999を観に行ったり、大阪まで日帰りオーケストラに出掛けたり。鉄道の旅がもたらす駅弁という楽しみもあり、「観劇」は正に「感激」なことだらけなのだ。
今日の観劇は部活動の教え子、Hちゃんが出演する演劇舞台公演。剣道部仲良し三回生の紅一点だったHちゃん、今回の役は時代劇のくノ一!女忍者である。殺陣があることをとても喜んでいた。殺陣のある役は二回目だからか、今回は余裕に見えた。剣道とは違う足さばきが巧くできるか楽しみにしていた。なってるなってる!くノ一の動きに!やるなぁ!どちらかというと、そのかわいい風貌から少女やお姫様みたいな役が多かった気がするが、実は「きつい表情」の豪快な女将役がぴったりハマることを知っている。ギャップ萌えというやつだ。彼女の演技の幅広さに、一気に引き込まれて、気がついたらファンになっていた。市教委の選挙権に関する広報動画にも女子高生最後の歳にしっかり出演し、フツーの可愛い女子高生の顔も覗かせながら、いつか主人公を手玉に取る悪女役なんてはまりそうな気がしてならない。自分が関わった子どもの発表会には欠かさず参加して、たくさんの感動を味わってきたが、まさかこんな形でその道のプロになる子と出会えるとは。定年間際で女子高生相手に推し活をする事になろうとは!これからももっと精進して、誰からも求められる大女優になっておくれ!私の願いはそのただひとつ。
追伸
でも、誰が何と言っても今回の演劇の殊勲賞は太鼓演奏のお兄さん。最初から最後まで休みなく、しかも力の必要な和太鼓でできたドラムセットをうなるように激しく叩き続けた。感服致しました!