飾釦

飾釦(かざりぼたん)とは意匠を施されたお洒落な釦。生活に飾釦をと、もがきつつも綴るブログです。

江戸川乱歩の研究?19⇒「パノラマ島綺譚」から

2006-04-07 | 江戸川乱歩
大富豪と成り代わり(入れ替わりのモチーフ)自身の夢であるパノラマ島を完成させた人見廣介。しかし、その犯罪が見破られたとき、人見は彼が作り上げた夢の空間で、壮絶にも人間花火となって破壊する。思い描く理想郷・パノラマ島も壮大だが、その死に方も派手である。

◆壮絶な最期
“次の瞬間空を見上げて、そこに咲き出でた光の花の余りの美しさに、再び感嘆の叫びを上げないではいられませんでした。それは、常の花火の五倍程の大きさで、それ故殆ど空一杯に拡がって、一つの花というよりは、あらゆる花を集めて一輪にした様な、五色の花弁が、丁度万花鏡の感じで、下るに随って、ハラハラとその色と形を換えながら、なおも広く広く拡がっていく行くのでした。

夜の花火でもなく、そうかといって昼の花火とも違い、黒雲と銀鼠色の背景に、五色の光が怪しき艶消しとなって、それが、刻一刻面積を広めながら、ジリジリと釣天井の様に下ってくる有様は、真実魂も消えるばかりの眺めでした。

その時、北見小五郎は、くらめく様な五色の光の下で、ふと数人の裸女に、或いは肩に、紅色の飛沫を見たのです。最初は湯気のしずくに花火の色が映ったのかと、そのまま見すごしていたのですが、やがて、紅の飛沫は益々はげしく降りそそぎ、彼自身の額や頬にも、異様な暖かなしたたりを感じて、それを手にうつしてみれば、まがう方なき紅のしずく、人の血潮に相違ないのでした。そして、彼の目の前の湯の表に、フワフワと漂うものを、よく見れば、それは無慚に引き裂かれた人間の手首が、いつのまにかそこへ降っていたのです。”

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