新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

2022年世界の大学ランキングに思う

2022-07-24 09:08:08 | コラム
我が国に誇りと自信を持つべきである:

言い換えれば「我が国にとっては、最早ヨーロッパ/アメリカへの崇拝(憧憬)は無用ではないか」なのだ。この点をPresident誌の22年8月12号で、脳科学者・茂木健一郎氏が独立研究者の山口周氏との対談で指摘しておられた。それでは「世界の大学ランキングは何処に行ってしまったのか」との疑問が出るだろうが、そこに行く前に、私にとってこの両氏の対談で印象的だったことから入っていこう。

それは、両氏が「このイギリスの高等教育専門誌The Times higher educationが毎年発行する世界の大学ランキングの22年度版には上位50校以内には東京大学が35位に入っていた以外には1校もなかったことを嘆くには当たらない」と指摘しておられた点である。茂木氏は“東大、京大が揃って上位にランキングされていない現実に「おまえらもっと頑張れよ」と思っていた。”と言われていた。

更に「でも、ここ最近はどうでもよくなってきてしまった・・・。つまり、これは当然の話なんですけれど、イギリスの教育界かジャッジするランキングですから、圧倒的に英米の大学が上位を占めているんですね。そんな彼らの価値観に、そもそも他言語文化の日本が必死に寄り添う必要はあるのかという疑問がある」と指摘されていた。賛成である。

そこを受けて、山口氏は「他者が始めたゲームに気づいたら参加させられていて、しかも真面目な日本人は、その土俵で必死に頑張り、上位を目指してしまうサガがあります」と応じられていた。20年以上も彼等アメリカ人(「白人」としても良いと思う)の中で、彼らの1人となって、彼らの思想・信条・哲学の下でというか、彼らの文化と思考体系に順応して働いていた者として言えば、この点も尤もな指摘であると思う。

換言すれば「彼らヨーロッパ/アメリカ人たちが打ち出した基準を最高のものの如くに崇めて受け入れ、それに何としても付いていこうとする必要は最早ないのではないか」と言っておられると読んだ。私は永年の白人世界で過ごして「我が国にはヨーロッパ/アメリカにはない独得の文明(civilization)と文化(culture)がある。それらを何か彼ら白人の世界のものよりも低位にあるかの如くに誤解して卑下する必要など毛頭ない」と認識しているので、両氏の指摘を尤もだと解釈したのだ。

敢えて再確認しておくと、私はこれまでに何度か「マスコミが世界の最新の科学と学問、スポーツ、歌舞音曲といった芸能の分野に我が国の優れた人たちが進出して輝かしき実績を挙げるか、世界的に著名は賞を受けると欣喜雀躍して、一斉に連日連夜報道して『さー、皆で祝いましょう。喜びを分かち合いましょう』と騒ぎ立てるのだ。

それはそれで結構なことだが、海外で認められたことでそんなに歓喜する時代は過ぎたのではないか。我が国には“ジャパン・アズ・ナンバーワン”と称えられた時期があったではないか。海外進出が快挙であった時代は終わっているのではないのか。もっと矜持を持って自分の国に誇りを持つべきではないのか」と指摘してあった。茂木氏と山口氏の指摘は、こういう点を穏やかに、実例を挙げて語っておられたと読んだのだ。

そこで、President誌に掲載されたランキングの概要を取り上げておこう。意外だと思われる方はおられるだろうと思う事は、我が国で崇められているIvy Leagueの代表的な名門、ハーバード大学は第3位なのだった。第1位はオックスフォード大学、第2位はカリフォルニア工科大学(Caltech)、4位はスタンフォード大学、第5位はケンブリッジ大学、第6位はマサチューセッツ工科大学(MIT)、第7位はプリンストン大学、第8位はカリフォルニア大学バークレー校(州立)、第9位はイエール大学、第10位はシカゴ大学となっており、上位10校は見事なほどアメリカとUKの大学だった。

50位までをザット見ていくと15位にスイスのスイス連邦工科大学チューリッヒ校、16位に北京大学と精華大学、17位にトロント大学(カナダ)、21位にシンガポール大学、30位に香港大学、32位にルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン(ドイツ)、33位にメルボルン大学(オーストラリア)、35位に東京大学、37位にブリティッシュコロンビア大学(カナダ)、38位にミュンヘン工科大学とアメリカとイギリス以外の大学がランクされていた。因みに、50位にはマンチェスター大学(UK)だった。私は中国の大学の評価が高いのは気になった。

重ねて言うと、「このようなランキンが出てきたことで一喜一憂する必要などない」のである。寡聞にして、このランキングを採り上げて報じていたメデイアがなかったように思うが、もし見る機会があって、報道機関が卑下するような自虐的な論調だったとしても「何を言うか」と相手にしないようにして頂きたいのだ。山口氏は「相手の土俵で必死に頑張らないように」と示唆しておられたではないか。私はこの指摘は報道機関に向けられたと解釈するものだ。