♦️343の2『自然と人間の歴史・世界篇』自動車の時代へ

2018-11-27 19:19:51 | Weblog

343の2『自然と人間の歴史・世界篇』自動車の時代へ

 かたや内燃機関の開発が進んでくると、それを搭載して自動車を柱にすことが現実化していく。1870年には、ユダヤ系オーストリア人のジークフリート・マルクスが自動車の試作を行う。1879年には、ジョージ・B・セルデンがガソリンで走る自動車を試作し、1895年に特許を取得する。

 1888年、先のマルクスが、ドイツでマグネット型の低定電圧点火装置を初軽視、特許を取得した。

 そして迎えた1893年、アメリカのフォード自動車カンパニーがつくった自動車が初めて街頭に現れる。1897年には、ドイツ人のルードルフ・ディーゼルが、ディーゼル・エンジンの原理を発明する。

  1900年のアメリカの人口は7609万人を数え、製鋼生産高はイギリスの2倍に達す。1911年には、ヘンリー・フォードのフォード社が、自動車の大量生産体制をつくる。1914年、その意欲的経営者のフォードは、労働者の日給5ドルの最低賃金に引き上げる。その対象者は、22歳以上の月給制ではない労働者であった。また、一日の労働時間につき、8時間労働制を打ち出す。1926年には、週5日制を導入したという。

 そんなフォードだが、一気呵成というか、なかなかの奇抜な思想を抱いており、歯に衣を着せない言いぶり、書きぶりが目立つ人物なのであって、例えばこういう。

 「労働は万人の為すべき自然の業務である。はたらかなくともよいという組織は、未だかつて発明されたことはない。自然は労働を要求する。手と頭は怠けているように作られているのではない。労働はわが健康であり、わが自尊であり、わが救済である。」(「わが勤労哲学」)

 「法律は建設的ないかなることをも行わない。(中略)立法が貧困を除去し、特権を廃止することをわれわれが当てにしている限りは、われわれは、貧困が広がり、特権が増大するのを黙って見ていようとするのである。」(「わが人生と仕事」)

 「この国における労働組合員のうちで唯一の強力なグループは、組合から報酬を得ているグループである。(中略)労働組合員がわれわれの従業員のために行うことができることは何もない。」(同)

 このような破天荒な思想の集合であるからして、人物像が誠にとらえにくいのだが、尾上一雄氏は、あえて次のようにまとめておられる。

 「彼は高賃金政策をとったのに、さきに述べたように、労働者の団結やその団体交渉に反対したのは、彼のボス的、「独裁者的」性格、さらに、【中略】独善的な、思いあがったキリスト教的企業哲学、即ち、1902年に、フィラデルフィア&レディング鉄道会社、ジョージ・F

・ベイアによって表明された有名な哲学ー「労働者の権利と利益は、労働運動扇動者ではなく、神が彼の限りなき叡智をもってこの国の財産所有権を与えたもうたキリスト教徒によって、保護され、尊重されるだろう」ーによるものと考えられる。」(尾上一雄「増補アメリカ経済史研究1」杉山書店、1969)

 

(続く)

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