令和・古典オリンピック

令和改元を期して、『日本の著名古典』の現代語訳著書を、ここに一挙公開!! 『中村マジック ここにあり!!』

家待・政争の都編(18)顧(かへり)見しつつ

2011年10月25日 | 家待・政争の都編
【掲載日:平成23年10月25日】

・・・玉桙たまほこの 道に出で立ち をかの崎 いむるごとに
      万度よろづたび かへり見しつつ 遥遥はろばろに 別れしれば・・・



次々と 到着する 防人さきもり兵士
集められた  歌
あの歌も この歌も 家持の胸をえぐ
任務忘れて 兵士に代わりての歌 む家持

大君おほきみの けのまにまに 島守しまもりに 我が立ちれば ははその 母のみことは 御裳みもの裾 で ちちの実の 父のみことは 栲綱たくづのの 白鬚しらひげうへゆ 涙り 嘆きたばく 
《国の任命 お受けして わしが防人さきもり 出る時に 母上すそ つまみ上げ 頭をでて いとおしみ 父上白鬚ひげに 涙垂れ 嘆きおっしゃる ことは》
鹿児かごじもの ただ独りして あさの かなしき我が子 あらたまの 年の長く あひ見ずは 恋しくあるべし 今日けふだにも 言問ことどひせむと 惜しみつつ 悲しびせば 
《「一人育ちの この息子 朝に出かける いとし児よ 長い年月としつき 逢われんの さみし限りや せめて今日 一日だけは はなそや」と 別れ惜しんで 悲しむに》
若草の 妻も子どもも 遠近をちこちに さはかく 春鳥の 声のさまよひ 白栲しろたへの 袖泣き濡らし たづさはり 別れかてにと 引きとどめ したひしものを 
《妻も子供も 前後まえうしろ 大勢わしに からみつき 声あげ泣いて 袖濡らし 手ぇ引っ張って いややでと 行ったあかんと 引きめた》
大君おほきみの みことかしこみ 玉桙たまほこの 道に出で立ち をかの崎 いむるごとに 万度よろづたび かへり見しつつ 遥遥はろばろに 別れしれば 
受けたお役目  果たすため 心を鬼に 旅立って 岡の曲がりの その角で 何度ともう 振り返り 家をはるかに やって来た》
思ふそら  安くもあらず 恋ふるそら 苦しきものを うつせみの 世の人なれば たまきはる 命も知らず  
《思う心は せつうて 恋し思いは 苦しいで この世生まれた 人やから はかない命 思うけど》
海原うなばらの かしこき道を 島づたひ いぎ渡りて ありめぐり 我がるまでに たひらけく 親はいまさね つつみ無く 妻は待たせと すみのえの 皇神すめかみに ぬさまつり 祈りまをして
《恐ろし海の 道のりを 島をつとうて いで行き 役目果たして 帰るまで 親よ達者で 居てくれよ 妻よつつが 待つにと 住吉すみのえ神に 願いして ぬさそなえて お祈りし》
難波津なにはつに 船を浮けゑ 八十やそかじき 水手かこととのへて 朝開き 我はぬと 家に告げこそ 
難波なにわの浜に 船浮かべ かじつらぬいて 水夫かこそろえ 朝の港に 船して 出かけたうて 家伝えてや 
                         ―大伴家持おおとものやかもち―(巻二十・四四〇八)
                                 【反歌 「神の御坂に」に続く】



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