豆豆先生の研究室

ぼくの気ままなnostalgic journeyです。

モーム 『英国諜報員 アシェンデン』

2017年09月15日 | サマセット・モーム

 ジュンク堂のポイントがたまっていたので、サマセット・モーム『英国諜報員 アシェンデン』(金原瑞人訳、新潮文庫)と交換した。

 『アシェンデン』は龍口直太郎訳の『秘密諜報部員』(創元推理文庫、1959年初版、1970年27版)と、河野一郎訳『アシェンデンⅠ』(新潮文庫、1963年初版、1971年11刷)を持っているが、岩波文庫や新潮文庫で新訳と銘打ったものが出ていて気になっていた。

 訳を読み比べるほどの小説でもないが、久しぶりにモームもいいかな、と思った。
 今回のものには、「前書き」が付いていた。他の2冊にはない。
 この「前書き」の最後の一文の意味が私には分からなかった。

 もう1つの不思議は、この小説のタイトルである。

 龍口訳は、表紙は『秘密諜報部員 ashenden』となっているが、背表紙や奥付は『秘密諜報部員』だけである。扉ページの裏の原題には“Ashenden”(原著の刊行年は1928年)とある。創元推理文庫の読者層を考えてのタイトルだろう。
 河野訳のタイトルは『アシェンデン』のみで、秘密諜報部員云々は出てこない。原題も“Ashenden”である。ただし、新潮文庫(旧版)の第2巻の表紙には、ゴシック体で「秘密諜報員」とか何とかというサブタイトルがついていたように記憶する。持ってないので確認できないが。


 これに対して、金原訳は『英国諜報員 アシェンデン』であり、原題は“Ashenden or The British Agent”(刊行年は記載なし)となっている。

 中野好夫編『モーム研究』(英宝社)によれば、アシェンデンの原著は“Ashenden”で、1928年刊となっている。
 ただし、この本の仏語訳は“Mr. Ashenden, agent secret”となっており、スペイン語訳は(おそらく)「秘密諜報員」というタイトルのようである。創元文庫のような要望が強かったのだろう。
 今回の金原訳に書いてある原題は“Ashenden, Or The British Agent”である。刊行年は記載なし。

 編集者の依頼に応じて、『人間の絆』の要約版を自ら作ってしまうほどのサービス精神を有するというモームだから、編集者や出版社からの要望に応じて、このようなタイトルのものも出版されたのであろう。


 2017/9/15 記


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