豆豆先生の研究室

ぼくの気ままなnostalgic journeyです。

エデンの東

2006年09月01日 | 映画
 
 『エデンの東』―― わたしのおすすめの本

 スタインベックの『エデンの東』を読んだのは、1964年、中学3年生の夏休みだった。その年がジェームス・ディーンの没後10年にあたることから、夏休みに彼の主演した映画『エデンの東』がリバイバル上映された。ぼくは彼のしぐさをまねて、女の子を見つめるときは、いったんあごを引いて伏し目がちにしてから、おもむろに上目遣いに見つめるなどしたものだった。効き目はまったくなかった。

 上下2冊、2段組で、上巻が334頁、下巻が402頁ある原作も一気に読んだ。受験勉強から逃げていたのかもしれないが、おそらくそのテーマに惹かれたのだと思う。『エデンの東』のテーマは、父と息子との葛藤である。厳格なキリスト者の父は、真面目な兄を愛し、母親に似た弟を疎(うと)む。兄弟の母は厳しすぎる夫のもとを去って、売春宿の経営者に身を落としているのだが、弟はこの秘密を兄に告げてしまう。衝撃を受けた兄は第1次大戦に志願兵として出征し、戦死する。その知らせを受けた父も脳溢血で倒れる。
 死の床に伏せった父に向かって、ディーン演ずる弟は涙ながらに「ぼくはお父さんに愛されたかった」と語りかける。映画のラスト・シーンでは、父は弟を赦(ゆる)してしまう。しかし原作の最後の1行は違う。父はただ一語、声をかけるだけである。

 「ティムシェル!」 
 彼は眼をとじ、そして眠った。 (野崎孝訳)
 「ティムシェル」とは古代ヘブライ語で「人は道を選ぶことができる」という意味である。赦す、赦さないといった問題ではない。父に愛されようとなかろうと、人は自分で道を選び、その道を歩いてゆくしかない。父が息子に言えることは「ティムシェル」しかないのだ。

 あの時以来、ディーンの立場に身をおいて思い浮かべる『エデンの東』だったが、いつの間にか、今度はぼく自身が息子に向かって「ティムシェル!」と語りかける順番になってしまった。

 [ジョン・スタインベック/野崎孝・大橋健三郎訳『エデンの東(上・下)』  (早川書房、1955年、絶版)。現在でもハヤカワ文庫ノヴェルズから4分冊で出ているが、勝呂忠装丁のカバーがかかった単行本のほうが「早川」らしくて、ぼくは好きだ。古本屋で探してほしい。]

(2006年9月1日。初出は2003年11月)

 * 写真は、映画「エデンの東」のサントラ盤も入ったソノシート(キングカラーレコード「映画音楽ゴールデンヒッツ」。他に、「禁じられた遊び」「第三の男」「鉄道員」が入っている)。

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Try to Remember

2006年09月01日 | あれこれ
 9月になったので、背景を元に戻します。アルプスの背景は、やや重いらしく開くのがワンテンポ遅れます。
 夏休みもあとわずかでお終いです。この2、3日これまでの「豆豆博士の研究室」への投稿を加筆したり、写真を添付したりしました。軽井沢関係の本、古い絵葉書や写真、モームの憧れたロージー嬢(?)の謎の面影などを付け加えてあります。
 よかったら、見てください。

(2006年 9月 1日)

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