いよいよ本格的にPCで地上波デジタル放送を見ることができる時代が来るのか―。総務省が「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」の中で、積極的に地上波デジタル放送のIP再送信の推進について書いている。広告をベースに無料放送を行っている地上波にとっては、先日のNRIのレポートにみられるように、広告収入の低下が想定されるが、このIP再送信はそういった意味で、プラス要因と考えられるのではないか。現状、PCでテレビを見る人たちの目的が、PCを使い「ながら」の視聴とHDRの代わりにPCで「録画」するという点にあるわけだけれど、この「ながら」を拡大するという意味で、IP再送信はメリットだろう。「ながら」であれば少なくともCMがスキップされることはない。果たしてIP再送信は簡単に普及するのだろうか。
地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割
地上デジタル、光回線で放送容認 審議会が答申 (朝日新聞) - goo ニュース
テレビの地上デジタル放送 ネットなど利用し家庭配信 総務省
西正さんの記事が指摘しているように、これまでの「放送」という枠組みでIP再送信を考えると、幾つかの課題が残っている。「著作権」「遅延」「通信ログデータ」「同一性の保持」「エリア管理の問題」とのこと。
ITmediaアンカーデスク:IP再送信の課題をどう考えるか
「著作権」の問題については「決め事」でしかないので、放送の再送信は「放送」の一部として解釈をするほか、現実的には著作権者と放送局/配信事業者間での調整はできないだろう。むしろサーバ型放送を「放送」という枠組みで処理していることの方がおかしいのではないかと思う。
「遅延」の問題や「同一性の保持」の問題は西さんも書かれている通り、現実的には大して問題ではない。興味深いのは「エリア管理」の問題と「通信ログ」の問題だ。
「エリア管理」の問題というのは、放送というものが、戦前の反省などもあり、「ローカル免許制」をとっていることから発生する問題だ。地方に行くと、殆どが東京のキー局の番組が流れているとはいえ、放送を行っているのは系列局である「地方局」だ。だからローカルニュースも流れるし、放送時間帯も東京とは異なることもある。とはいえ所詮電波である。大阪にいながら兵庫県の放送がはいるといった「域外放送」の問題もあることはあるがこれは例外とされている。つまりネットを通じて「IP放送」を行った場合、特定のエリアだけにその地域の放送局の放送を流すことができるのか、という問題が発生する。
これは幾つか条件とやり方によって解決可能な問題だ。
まずISPなどがユーザーに割り当てるIPアドレスとそのエリアをマッチングさせる必要がある。またあくまでその地域の放送局の放送を再送信させるというのであれば、そのエリアにあるNTTの局舎やアクセス回線を提供している通信事業者の施設から再送信をさせる必要がある。
やり方としては、1)各エリアの地方局同士がNTTの局舎などを借りて再送信するための設備を用意し、それを各ISPなどに利用してもらう、2)放送局とNTTなどの通信事業者が共同で再送信するための事業会社などを作り、2-1)そこがISPからそのエリアのIPアドレス体系を通知してもらい再送信を行う、2-2)あるいはその事業会社がISPにそのサービスを提供する、といった形がとってり早いのではないだろうか。まぁ、いずれにしても簡単には行かないだろう。
しかしそもそもこれは「ローカル免許」を前提とした考え方だ。そもそもこのインターネット時代にIPアドレスを利用して再送信しようというのに、「国」単位ならともかく「地域」単位に分ける必要があるのか。単純に、キー局から地方局・独立局までを含んだ「再送信」したい放送局が全国の光ファイバを利用しているユーザーに再送信してもいいのではないか。少なくともここでローカル免許にこだわるのはユーザーの視点ではなく、関係者間の利害関係のためだろう。そういう意味もあってこの「エリア管理」の問題は興味深い。
また「通信ログ」の問題はこれはある意味、これまでの放送ではできなった「通信」を利用することならではの問題だ。確かに現状の「視聴率」というのは極少数のサンプリングによって成り立っている。IP放送を使った場合、このサンプリング数を大幅に増やし、より詳細にな数値をとることも可能であるし、あるいは利用者の特性を把握することも可能かもしれない。仮にその放送にインターネットサイトへのリンクなどが行われた場合、どの番組を見ている層がどういう商品やサービスに興味があるといった、マーケティングデータを収集することも可能となる。個人情報保護の関係もあるが、仮に先ほどの2)で示したような事業会社がこうした情報を収集し、取り扱うとしたら、これは広告代理店にとっても大きな魅力となるだろう。
西さんの記事ではこれら5っの問題が指摘されているが、個人的には、後、コンテンツ保護の問題も課題として意識しなくてはならないと思う。所謂「B-CASカード」の問題だ。CS、地デジといったデジタル放送は不正コピーを防ぐためにデータを暗号化している。これを解除するための暗号鍵を収めたものが「B-CASカード」といわれるもので、正規のチューナーには梱包されている。ではこれをIP放送で実現するためにはどうするのか。単純に考えれば、専用の再生プレイヤーとそれに対して暗号鍵を配布すればいいということになる。しかし闇雲に配布するというのでは不正利用のリスクを高めるだけとなる。先の組織のようなものが、USBメモリーなどの物理的装置にするか、ライセンスのような形にするかはともかく、ユーザーの登録に基づき配布するという形をとるべきだろう。そうすれば「ライセンス管理」と「利用者の属性」とも結び付けやすくなる。
実際にIP再送信がスタートするまでにはまだまだ時間がかかるだろうが、これはこれまでの放送ビジネスのスキームを変える可能性がある「大いなる可能性」だ。今後も、いろいろな利害関係者の駆け引きなどがあるだろうが、少しでも早く実現して欲しいと思う。
PCからTVを攻める-「TVポータル」の可能性
面白くなくても「テレビ」なら見る!?
地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割
地上デジタル、光回線で放送容認 審議会が答申 (朝日新聞) - goo ニュース
テレビの地上デジタル放送 ネットなど利用し家庭配信 総務省
西正さんの記事が指摘しているように、これまでの「放送」という枠組みでIP再送信を考えると、幾つかの課題が残っている。「著作権」「遅延」「通信ログデータ」「同一性の保持」「エリア管理の問題」とのこと。
ITmediaアンカーデスク:IP再送信の課題をどう考えるか
「著作権」の問題については「決め事」でしかないので、放送の再送信は「放送」の一部として解釈をするほか、現実的には著作権者と放送局/配信事業者間での調整はできないだろう。むしろサーバ型放送を「放送」という枠組みで処理していることの方がおかしいのではないかと思う。
「遅延」の問題や「同一性の保持」の問題は西さんも書かれている通り、現実的には大して問題ではない。興味深いのは「エリア管理」の問題と「通信ログ」の問題だ。
「エリア管理」の問題というのは、放送というものが、戦前の反省などもあり、「ローカル免許制」をとっていることから発生する問題だ。地方に行くと、殆どが東京のキー局の番組が流れているとはいえ、放送を行っているのは系列局である「地方局」だ。だからローカルニュースも流れるし、放送時間帯も東京とは異なることもある。とはいえ所詮電波である。大阪にいながら兵庫県の放送がはいるといった「域外放送」の問題もあることはあるがこれは例外とされている。つまりネットを通じて「IP放送」を行った場合、特定のエリアだけにその地域の放送局の放送を流すことができるのか、という問題が発生する。
これは幾つか条件とやり方によって解決可能な問題だ。
まずISPなどがユーザーに割り当てるIPアドレスとそのエリアをマッチングさせる必要がある。またあくまでその地域の放送局の放送を再送信させるというのであれば、そのエリアにあるNTTの局舎やアクセス回線を提供している通信事業者の施設から再送信をさせる必要がある。
やり方としては、1)各エリアの地方局同士がNTTの局舎などを借りて再送信するための設備を用意し、それを各ISPなどに利用してもらう、2)放送局とNTTなどの通信事業者が共同で再送信するための事業会社などを作り、2-1)そこがISPからそのエリアのIPアドレス体系を通知してもらい再送信を行う、2-2)あるいはその事業会社がISPにそのサービスを提供する、といった形がとってり早いのではないだろうか。まぁ、いずれにしても簡単には行かないだろう。
しかしそもそもこれは「ローカル免許」を前提とした考え方だ。そもそもこのインターネット時代にIPアドレスを利用して再送信しようというのに、「国」単位ならともかく「地域」単位に分ける必要があるのか。単純に、キー局から地方局・独立局までを含んだ「再送信」したい放送局が全国の光ファイバを利用しているユーザーに再送信してもいいのではないか。少なくともここでローカル免許にこだわるのはユーザーの視点ではなく、関係者間の利害関係のためだろう。そういう意味もあってこの「エリア管理」の問題は興味深い。
また「通信ログ」の問題はこれはある意味、これまでの放送ではできなった「通信」を利用することならではの問題だ。確かに現状の「視聴率」というのは極少数のサンプリングによって成り立っている。IP放送を使った場合、このサンプリング数を大幅に増やし、より詳細にな数値をとることも可能であるし、あるいは利用者の特性を把握することも可能かもしれない。仮にその放送にインターネットサイトへのリンクなどが行われた場合、どの番組を見ている層がどういう商品やサービスに興味があるといった、マーケティングデータを収集することも可能となる。個人情報保護の関係もあるが、仮に先ほどの2)で示したような事業会社がこうした情報を収集し、取り扱うとしたら、これは広告代理店にとっても大きな魅力となるだろう。
西さんの記事ではこれら5っの問題が指摘されているが、個人的には、後、コンテンツ保護の問題も課題として意識しなくてはならないと思う。所謂「B-CASカード」の問題だ。CS、地デジといったデジタル放送は不正コピーを防ぐためにデータを暗号化している。これを解除するための暗号鍵を収めたものが「B-CASカード」といわれるもので、正規のチューナーには梱包されている。ではこれをIP放送で実現するためにはどうするのか。単純に考えれば、専用の再生プレイヤーとそれに対して暗号鍵を配布すればいいということになる。しかし闇雲に配布するというのでは不正利用のリスクを高めるだけとなる。先の組織のようなものが、USBメモリーなどの物理的装置にするか、ライセンスのような形にするかはともかく、ユーザーの登録に基づき配布するという形をとるべきだろう。そうすれば「ライセンス管理」と「利用者の属性」とも結び付けやすくなる。
実際にIP再送信がスタートするまでにはまだまだ時間がかかるだろうが、これはこれまでの放送ビジネスのスキームを変える可能性がある「大いなる可能性」だ。今後も、いろいろな利害関係者の駆け引きなどがあるだろうが、少しでも早く実現して欲しいと思う。
PCからTVを攻める-「TVポータル」の可能性
面白くなくても「テレビ」なら見る!?
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます