イナズマイレブン人気投票に見る2ちゃんねらーの不条理な「力」

「日本鬼子(ひのもと おにこ)」は2ちゃんねるーなど日本のネット文化が中国人のどぎもを抜くという、画期的な事象だったわけだけれど、そうした2ちゃんねらーたちの活動をそれだけで肯定的に捉えるのは、やはり難しいようだ。根っこの部分が同じだと思われるもう1つの事象について。

イナズマイレブンというアニメがある。もともとは、ニンテンドーDS用サッカーRPGが原作で「コロコロコミック」で連載され、テレビ東京系列で放送されている(らしい)。

この「イナズマイレブン」が12月に映画化されるらしく、その盛り上げ企画として、「爆熱キャラクター人気投票」というのをやっている。上位3位までのキャラクターが壁紙になるということで、このアニメのファンらは好きなキャラを上位3位にするために一生懸命投票をしていたらしい。そこに2ちゃんねらーたちがやってきた。

爆熱キャラクター人気投票 ｜『劇場版イナズマイレブン 最強軍団オーガ襲来』映画公式サイト

イナズマイレブンの人気投票にあり得ないキャラが1位に！　子どもと腐女子ファンが激怒 - ガジェット通信

『2ちゃんねる』の『ニュー速VIP』板に“イナズマイレブンのキャラ人気投票で五条1位にして子供と腐女子泣かそうぜwww ！”というスレッドが立てられ、2ちゃんねらーらの組織票が五条に集中、一気に1位となることに。ちなみに五条勝は脇役的存在。確かにキャラの絵をみてもそんな感じの扱いだ。

これに激怒したのが女性ファンたち。そりゃそうだ。キャラの絵を見る限り、11月20日時点で3位に入っていない円藤守や吹雪士郎といったところが中心キャラなのだろう。それをまぁ、このキャラが1位じゃあ…

まぁ、このやり取りは2ちゃんなりネットニュースなりでチェックしてもらえばいいのだけれど、この2ちゃんねらーたちの行為に対して、何に対して怒り/憤り、しかしネットである以上、それが避けられないならばどのようにすればよかったのだろう。

この2ちゃんねらーたちに対する憤りの原因は何だろう。単に脇役が1位になったことに対して怒っているのなら、投票である以上、そういう事態もありえる話だ。そうてはなく、ここにある怒りの原因はある種の「不条理」が存在するからだ。その不条理こそ、2ちゃんねらーたちがスレを立ち上げた理由、「子供と腐女子泣かそうぜwww ！」という「悪ふざけ」「退屈しのぎ」のために、ファンたちの純粋な楽しみを奪われたからだろう。

イナズマイレブンの人気投票はそのファンによって行われるべきである。

そうしたファンたちの思いが、2ちゃんねらーたちの悪ふざけによって踏みにじられたことに怒り原因はあるのだろう。

とすると、この投票システムはどのように行われるべきだったのか。

システムの要件として、「イナズマイレブンのファンのみが投票できる」ということが求められる。とはいえ、この「ファンであること」の定義が難しい。会員制度やSNSのように登録制のコミュニティであれば仲間内で行えばいいのだろうが、今回の場合、そもそも映画の盛り上げ企画なんだし、よりOPENなことが求められる。となるとテレビの視聴者あたりに絞るというのが現実的だろう。テレビを見た上で五条に投票するのであればそれはそれだ。

テレビの視聴した人が投票する権利があるとするならば、放送中に投票に必要なパスワードのようなものを案内するというのがやり方としてはある。しかしこうしたパスワードもいったんネットの世界でさらされれば、放送を見ていない人でも投票できることになる。

こうしたシステムを実現しようとすると、放送とインターネットは相性が悪い。インターネットは1:1での通信が基本だ。ネット上の動画視聴者にのみ対象者を絞るというのであれば、パスワードを一回性のものにすることも可能だし、IPアドレスやブラウザを下に個別認識も可能だ。ある程度不正を防ぐことができるだろう。しかし放送中にパスワードを告知した場合、視聴者全員で共有することになる。

実際にテレビの視聴者の情報をインターネット側に引き継げない以上、テレビとネットを連動させた投票システムというのは無理がある。これらはGoogleTVの登場まで待たねばならない。むしろインターネットでは結果を見るだけとし、地デジの放送連動を利用して視聴者と投票権限を結びつけるしかない。

ネット連動とした段階で、こうした不条理は避けられないのだ。

2ちゃんねらーのこうしたパワーは、プラスの方向に働けば「日本鬼子(ひのもとおにこ)」や「海岸掃除」につながったりするのだろうが、マイナスに働けば今回のように特定のコミュニティを侵害することにつながる。彼らを駆り立てるものが「道徳」や「倫理」、「正義感」ではなく、場当たり的な「享楽」「退屈しのぎ」祭り的な「一体感」「盛り上がり」でしかないのだ。

ファンの方には申し訳ないが、考えようによっては、2ちゃんねらーのおかげで「イナズマイレブン」を初めて知ったという(僕のような)人間もいるわけだし、別な意味でも映画のプロモーションにはなったのとポジティブに考えるしかないのだろう。

「日本鬼子(ひのもと おにこ)」は成熟日本を救えるか - ビールを飲みながら考えてみた…