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日本のブルー・オーシャン戦略 10年続く優位性を築く / 安部義彦、池上重輔

2009年09月25日 | 読書
W・チャン・キムさんの「ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する」が売り切りていたので、ちょっと迷ったけれど購入。アマゾンのレビュー欄を見ると、オリジナルよりもわかりやすい、実践的といったコメントがあったのだけど、うん、まさにその通り。逆に実践的過ぎ・わかりやすすぎるくらい。やはりオリジナルもあわせて読むほうがいいのだろう。

とりあえず内容のまとめ。感想というか、反省というかそれは別途まとめます。


日本のブルー・オーシャン戦略 10年続く優位性を築く/安部義彦、池上重輔

ブルーオーシャン戦略は「競合と既存の市場を奪い合う」通常の競争戦略(レッド・オーシャン戦略)とは異なり、組織的に新しい需要を喚起する戦略である。ブルー・オーシャンとは未だ存在していない市場のことであり、そうした未知の市場空間を創造することで、利益の伸びは大きくなり、成長の速度も速くなる。これまでも「結果的に」ブルーオーシャンを創造してきた企業はあるが、このブルーオーシャン戦略では、再現可能な、体系化された方法論として提示する。また「戦略の方向性を示すだけではなく、実行する方法論まで提示する」ものであり。

■ブルーオーシャン戦略の三つの中核要素

ブルーオーシャン戦略は「バリュー・イノベーション」「ティッピング・ポイント」「フェア・プロセス」の三つの要素から構成される。

一般的にレッドオーシャンにおいては、提供側のコストと買い手側の付加価値はトレードオフの関係にあるといわれている。それに対して、ブルーオーシャン戦略ではコストを押し下げながら、買い手側の付加価値を継続的に高めていこうとする。そのためには業界の中で「常識」とされていたいくつかの要素を削ぎ落とす(コストカット)必要があるだろうし、買い手にとってのバリューを高めるためには未知の要素で付加価値を高める必要があるだろう。こうした「バリュー・イノベーション」を実現することが求められる。

しかし実際にこのようなバリュー・イノベーションを進めようとした場合、「アイデアはよかったのに組織内で実行されない」といったケースがままある。着実に実行するための戦略として「ティッピング・ポイント」と「フェア・プロセス」が重要となる。

新しい戦略の策定にあたっては常にリスクがつきものである。新市場を創造するためには以下の6つのリスクに対処する必要がある。

1)新たな事業分野を発見できない「サーチリスク」
2)整合性のある計画を立てられない「プランニングリスク」
3)事業機会の規模が大きくならない「スケールリスク」
4)実際に収益があがるビジネスモデルとならない「ビジネスモデルリスク」
5)組織が新しい戦略に動員できない「組織リスク」
6)従業員の士気が上がらず戦略が実行されない「マネジメントリスク」

1)~4)までのリスクを低減させるために「バリュー・イノベーション」があり、5)組織リスクをさけるために「ティッピング・ポイント」が、6)マネジメントリスクには「フェア・プロセス」が対応することになる。

さらに「バリューイノベーション」を実現するためのツールとして、「戦略キャンパス」と「バリューカーブ」がある。

またブルーオーシャン戦略の導入に際しては、「戦略のビジュアル化」として4つのプロセス(覚醒→現地探索→戦略の見本市→コミュニケーション)に分けて考えると整理しやすい。

ブルーオーシャン戦略の正しい戦略策定順序は以下の通り。
1 買い手にとっての比類なきユーティリティ
2 マスのとれる価格設定
3 収益のとれるコスト
4 導入


■バリュー・イノベーションとブルーオーシャンの基本ツール

バリュー・イノベーションを実行するためには買い手側が評価する「本質的価値」を正しく理解する必要がある。例えば昨今の「携帯電話」を見れば、テレビ受信機能、メール管理、キャラクター、カメラなど多様な機能が付加されているが、かならずしもユーザーが全ての機能を求めているわけではない。ブルーオーシャン戦略では、買い手が認めるようなバリューを、最大需要が獲得できるような価格設定する必要がある(プライス・コリドー・オブ・マス)。

比類なきユーティリティの提供と最大需要を獲得できるような価格設定を行うためには、何かを取り除いたり(Elinimate)、減らしたり(Reduce)、増やしたり(Raise)、創造(Creata)しなければならない。RRRCグリッドなどのツールを使いながら、これらのプロセス繰り返し、最終的に戦略キャンパス上の「バリュー・カーブ」に落とし込むことになる。

戦略キャンパスとは、横軸に既存業界各社が重要視しているファクタを縦軸に顧客が受けるバリューのレベル(高低)をプロットしたグラフのことだ。その上にバリューをプロットした時にできあがるカープが「バリュー・カーブ」であり、競争のファクタごとに各社のパフォーマンスを表すことになる。

ここに業界全体、競合、自社のパフォーマンスをプロットすることで、「業界」「競合」「自社」がどのような競争ファクタに力を入れているかが人目でわかる。業界、競合、自社が同じようなバリューカーブを描いていたとすると、業界全体で競争ルールがが出来上がっており同じ基準で戦っていることになる。このような状態では高い利益率や大きな成長を期待することは難しい。

ブルーオーシャン戦略では、ERRCグリッドを使いながら、製品やサービスの発展によって必要性の低くなったファクタを取り除いたり、他社との競争のあまりオーバースペックとなっているファクタを削減したり、また買い手にとっての付加価値となるファクタを「増やす」「加える」ことで、それまでのバリューカーブとは異なる、①資源のフォーカスが明確な、②独自性のある、③市場に一言で訴求できるようなバリュー・カーブを作り出すことになる。

このとき注意しなければならないことが、全ての競争ファクタに対応しようとしないことだ。全てに対応しようとすると、3つの特徴が実現できず、平凡で、買い手にその特徴が理解されず、高コストなものになってしまう。

■ブルーオーシャン戦略のプロセス

ブルーオーシャン戦略では細かい数字ではなく「ピック・ピクチャー(大きな全体像)」に集中することが求められる。大局的な見地で自社の進むべき方向を考え、社内にコミュニケートしていくために「戦略をビジュアル化する4つのプロセス」を活用することが重要である。

プロセス1 覚醒

戦略のビジュアル化のプロセスの1番目は「戦略キャンパスで現状を知る」ことから始まる。戦略キャンパス上で、競合企業と自社のバリュー・カーブを比較することで、①競争ファクタの優先順位が社内でも異なっていること、②実は競合と「大同小異」でしかないことを認識し、③危機感を共有し、④プロジェクトへのモチベーションを高めることが求められる。

プロセス2 現地探索

サーチリスクを乗り越えるために、ブルーオーシャン戦略では新市場を組織的に考えるツールを用意している。それが「市場の境界を引き直す6つのパス」と「ノン・カスタマーに目を向ける」という2つの方法論だ。

企業の多くはレッド・オーシャンの競争常識にとらわれたままだ。そのため互いの戦略は似たよったものになりがちだ。そうしたレッドオーシャン的な戦略の前提を問い直すために6つのパスがある。

パス① オルタナティブを広く見渡す

代替品が「形態は違うが機能は同じもの」だとすると、オルタナティブはより広く「形態や機能は違うが目的は同じもの」といえる。例えば、レストランの代替品はハンバーガーショップや喫茶店となるかもしれないが、「外出して楽しい夕べを過ごす」という目的から考えれば映画館がオルタナティブになるかもしれない。

パス② 業界内の他の戦略グループに学ぶ

業界内の他の戦略グループに学ぶことは比較的学習しやすく、非競争のヒントも得やすい。集団指導の大手学習塾の戦略と家庭教師の戦略の双方の戦略をうまく汲み取った「明光義塾」の個別指導などが参考になる。

パス③ チェーン・オブ・バイヤーズに目を向ける

購入の意思決定には直接の購入者以外にもさまざまな関係者が直接/間接的に関わっている。こうした直接/間接的に関わる者が購買の意思決定に影響を及ぼすことを「チェーン・オブ・バイヤーズ(買い手の連鎖)」という。こうしたチェーン・オブ・バイヤーズ」を見回すことで新たなるバリュー・カーブを描けることがある。

パス④ 併用される補完材や補完サービスを見渡す

製品やサービスはそれ単独で利用されることは少ない。たいていの場合、他の製品やサービスと併用されることによってバリューをましている。そうした補完材や補完サービス、前後のプロセスまでを見渡し、自社の戦略領域を広げることで、あまりコストをかけずに自社のバリューを拡大することが可能である。

パス⑤ 機能と感性のどちらで顧客にアピールするかを切り替える

自社の製品・サーヒスのアピールポイントを機能志向/感性志向の間で切り替えて考えることも、市場の線を引き直すヒントを与えてくれる。機能という競争ファクタに加え感性という競争ファクタを用意することで成功した「スウォッチ」や「スターバックス」、あるいは感性という競争ファクタを排し機能というファクタに特化した「QBハウス」や「ユニクロ」などが代表例。

パス⑥ 将来を見通す

ブルーオーシャンを創造するというのは、単純にトレンドを予測するというのではない。目の前のトレンドが将来的に買い手のバリューをどのように変化させ、それが自社のビジネスモデルにどのように影響するかを洞察し、主体的に未来を間切り開くことでブルーオーシャンは実現する。トレンドを見通すにあたっては、事業に決定的な意味合いをもたらすか、後戻りしないトレンドか、はっきりとした軌跡を描き着地点が予想可能かという点から見通す必要がある。

せっかく新しい市場を切り開こうとしてもその市場が小さなものであっては意味がない。規模のリスクを避けるために、既存顧客だけでなく「ノン・カスタマー」を深く見ることも必要である。この場合にノン・カスタマーを3つの層に分類して考察する手法は有効だ。

①ノン・カスタマー第1層「境界者」

自社の製品やサービスを利用しているがロイヤリティはなく、もっといいものを探している層。だが製品やサービスのバリューが飛躍的に高まれば優良顧客になってくれる可能性もある。

②ノン・カスタマー第2層「拒絶者」

自分たちのニーズを検討したうえで製品やサービスを選択しなかった層。その第2層のニーズは、他の何かで満たされているか、諦めているかなので、彼らのニーズを満たすような製品やサービスを提供できれば、巨大な市場を切り開くことができるかもしれない。

③ノン・カスタマー題3層

既存の市場からもっとも遠くにあり、その業界も顧客にしようと思ったことがなく、またこの層でも製品やサービスを利用しようと思ったことがない。

既存の顧客にとらわれていては市場の拡大は望めない。これらノン・カスタマーのいずれかをきっちり捉えることができれば新市場が切り開かれることは多い。


プロセス3 戦略の見本市

現地探索のプロセスで出来上がった戦略キャンパス(戦略案)を検証するのがこのプロセス。様々なステークホルダーの視点からフィードバックを得ることで、最適な戦略案を選択し、練り上げていくことになる。戦略オプションを作成することは「戦略策定チーム」で進めるが、それに対するフィードバックや評価は様々なステークホルダーを集めてオープンに行うべきである。1つは全社的な取り組みとするためのフェア・プロセスのためであり、また誰もが理解できるシンプルな戦略に磨きあけるためである。

プロセス4 コミュニケーション

戦略をビジュアル化する最後のプロセスが「コミュニケーション」であり、社内に新しい戦略を浸透させるプロセスだ。誰にでもわかりやすく、シンプルにビジュアル化することで、経営幹部から従業員の1人ひとりが新戦略を理解できるようにしなければならない。

そして戦略が共有されたなら、「To Be(あるべき姿)」と「As is(現状)」のギャップを埋めるために必要なプロジェクトや打ち手を実施しなければならない。


■正しい順序で戦略を考え利益を上げる

利益のとれるビジネスモデルを構築するためには以下の手順で考えることが必要だ。

1)買い手にとっての比類なきユーティリティ
2)マスのとれる価格
3)収益のとれるコスト
4)導入


1)買い手にとっての比類なきユーティリティ

企業は、自社が提供する商品やサービスが買い手にとって何らかのユーティリティーを提供しなければ成功しないことを知っている。だが実際に「比類なきユーティリティ」を提供することは難しい。先端技術・技術イノベーションを実現したからといってユーザーが「ユーティリティ」を感じるとは限らない。買い手にとっての「ユーティリティ」を考える上で便利なツールが「バイヤー・ユーティリティ・マップ」である。

バイヤー・ユーティリティ・マップとは、横軸に「顧客の購入体験(バイヤー・エクスペリエンス・サイクル)」の6つのステージ(「購入」「デリバリー」「使用」「併用」「メンテナンス」「廃棄」)をとり、縦軸に6つのユーティリティ・レバー(「買い手の生産性」「シンプルさ」「利便性(入手しやすさ、使いやすさ、廃棄しやすさなど)」「リスク」「楽しさ・好ましさのイメージ」「環境への優しさ」)をとり、その36マス上に検討中の商品やサービスを当てはめることにより、既存製品やサービスと比べてどの程度異なるユーティリティを顧客に与えることができるかを理解することができるツールである。

2)マスのとれる価格

買い手に対して比類ないユーティリティだと確証がえられたら、次は適正な価格を設定するプロセスとなる。ブルーオーシャン戦略は、製品を単純化して低価格を実現するというものではない。買い手に大きなユーティリティをもたらすという前提のうえで、市場が爆発的に広がる価格設定を行うものだ。そのための価格水準を見つけるためのツールが「プライス・コリドー・オブ・マス」である。

「プライス・コリドー・オブ・マス」では、業界の枠を超えて買い手が比較対象としている製品やサービスについて分析する必要がある。そのため①同じ機能を製品やサービスの価格帯だけでなく、②形態は異なるが、機能は同じ製品・サービス(ex.航空運賃に対しての鉄道やバスの利用料金)、③形態も機能も異なるが、根本となる目的(買い手の求めるユーティリティ)は同じ製品・サービス(ex.様々な情報を楽しむという目的のために雑誌と同等の価格設定を行ったiモードコンテンツ)についても、どの価格帯に買い手が密集しているかをビジュアル化し、戦略的に価格を決定する。

W・チャン・キム教授は、①ブルーオーシャンを切り開く製品が固定費が高く変動費が安い場合やネットワークの外部性(ユーザーが多いこと自体がバリューを高める)に魅力が大きく左右される場合、③コスト構造が規模の経済性、範囲の経済性に大きく左右される場合は、初めから買い手の密集する価格帯の中間~下限に価格を設定し、、戦略的にマスをとりにいくことが望ましいとしている。

3)収益のとれるコスト

ブルーオーシャン戦略では、多くの買い手を引きつける戦略価格を設定し、そこから必要な利益を引いて目標コストを算出するのが原則である。決してコストの積み上げ型の価格設定をおこなってはいけない。そのためにバリュー・カーブを描き、必要のないファクタを削ぎ落とし、コストの低減を実施しなければならない。

とはいえ、資源配分だけでは目標コストまで下げきらないことがある。そのためには「業務オペレーションを合理化し、調達から販売・アフターケアにいたるバリュー・チェーンの各段階でコスト革新を達成」し、また「他社との提携を通して、コスト革新を達成」する、「価格モデルを革新する」といったことが必要になる。

本来数万円もする携帯電話端末が0円~数千円という価格で売られていたのは、販売店へのインセンティブという形で端末価格が通話料金に転嫁されたことで、中長期的に回収するというモデルが成り立ったからでるし、レンタルビデオのように高値で「売り切る」のではなく、レンタルという「時間貸し(タイム・シェアリング)」で価格を抑えるといった手法ももある。

4)導入

最終的に「ブルーオーシャン・アイデア・インデックス(BOIインデックス)」を利用して、ユーティリティ/価格/コスト/導入といった各要素を満たしているか、整合性が取れているかを確認しよう。

■ブルーオーシャン戦略の実行

ブルーオーシャン戦略を実行するためには、組織面から4つのハードルを乗り越える必要がある。

1)認識のハードル(現状に浸りきった組織を変革の必要性に目覚めさせる)
2)経営資源のハードル
3)士気のハードル
4)社内政治のハードル(膨大な利害関係から抵抗を排除する)

従来の戦略では、大きな変革ほど成果がでるまでに時間と経営資源を有し、トップダウン型の変革が必要と感還られてきた。しかし「ティッピング・ポイント・リーダーシップ(TLP)」ではその常識を逆転させる。TLPでは、どのような組織でも、一定数を超える人々が信念を抱き、熱意を傾ければ、そのアイデアは大きな流れとなって広がっていくと考える。そのため1)~4)のハードルそれぞれに1番影響力をもつファクタを探し出し、集中的に働きかける。

それらのハードルを克服し、全社的に組織が新たな戦略を実行し結果を出す上で必須になるのが、「フェア・プロセス」である。トップのみでなく、中間管理職、現場のすべての従業員が新戦略に共鳴し完遂するためには、その戦略にまつわる「手続きの公平性」が必要となる。

フェアプロセスでは、互いに支えあう3つの要素から構成される。

1)関与
2)説明
3)明快な期待内容

ブルーオーシャン戦略は、競争のない新市場を創造・確立すれば終わりというものではない。開拓した市場を維持するためには相応の努力が必要となる。しかし真のブルーオーシャン戦略が実現できれば、他社からの模倣を防ぎ、長期にわたってブルー・オーシャンを維持することが可能となる。ブルー・オーシャンの模倣を防ぐ8つのメカニズムは以下のとおり。

1)業界の常識から外れている
2)ブランドイメージが損なわれる
3)大手にとって、市場が魅力的ではない
4)特許や法規制が障壁となる
5)一気に巨大市場となる
6)ネットワークの外部性が働く
7)業務オペレーションや社風を変えられない
8)高いブランド認知が障壁となる

成功したブルー・オーシャン戦略は複数の模倣を防ぐメカニズムが働いている場合が多い。


日本のブルー・オーシャン戦略 10年続く優位性を築く/安部義彦、池上重輔


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