ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

PHS-ウィルコムも撤退の歴史に巻き込まれるのか

2009年09月21日 | ネットワーク
PHS事業者・ウィルコムが危機的状況をむかえている。約450万人のユーザーを抱えながら、1000億円規模の債務返済期限延長を求めて、事業再生ADR(裁判外紛争解決)の手続きに入るとのこと。

ウィルコム、私的整理へ 銀行団に1000億円返済期限延長求める - ITmedia News

思えば日本で生まれたPHSは常に失敗の歴史だった。

1995年にNTTパーソナル、DDIポケット、アステルの3グループで事業化されたものの、携帯との競争激化などもあり、1998年にはNTTパーソナルがNTTドコモに営業譲渡され、1999年にはアステルから電力子会社に事業譲渡される。アステルの一部は鷹山(YOZAN)に事業譲渡されるも2006年にはサービスの終了。他のアステル系も次々に事業停止を行う。NTTドコモに2006年にはPHSサービスを終了させており、DDIポケットから社名変更したウィルコムだけが残ったという状況だった。

そもそもPHSの事業性は当初から厳しいものだった。

PHSはエリアの狭い簡易な基地局を設置し、基地局から中継網までの区間をISDNなどの公衆網を利用する仕組み。確かに基地局あたりの設備投資は少ないものの、カバーエリアを広げるためには多くの基地局を設置する必要があり(固定費が高い)、また通話料の中に公衆網の利用料金が含まれており(収益連動費の比率が高い)、収益率が決して高くなかった。そう考えると、もともとは公衆回線をもつNTT(東西)本体の付加サービスとして扱うべきだったのだろう。総務省などの規制がなかったならば。

結果的に、アステルもドコモもうまくいかず、DDI/ウィルコムだけが残ったことになる。DDIポケット/ウィルコムは、PHSの特徴であるマイクロセルを活かし電波効率を高めることで、「定額通話の実現」と「定額制データ通信」などで利用者をのばしたものの、ソフトバンクのホワイトプランやeモバイル、ドコモなどの定額データ通信プランによって次第におされていくことに。今回、その巻き返しのための「XGP(上り20Mbps)」を導入するための
資金調達や多額の有利子負債などでこのような事態になったとのこと。

まぁ、日本では既に携帯電話やPHSの契約者数は1億を超えており、iPhoneやデータ通信向けといった2台目需要の伸びはあるものの、すでに国内の携帯電話・PHS市場は「レッドオーシャン」と化したといってもいいだろう。そうした状況で、さらなる高速化や低価格路線での勝負は必ずしも勝者が存在するとは限らない。

もちろん他社を圧倒するようなイノベーションでもあれば別だけれど、すでにPHSのベースは枯れており、しかも上り20Mbpsでは、3Gに対しては優位性があるかもしれないが、ドコモなどが進めるLTEやUQコミュニケーションズのWiMAXとの競争力がなく、また今の一般利用者には必ずしも必要なものではない。FTTHとの競争と考えるのであればともかく、しかしそこもすでに激しい競争市場でしかない。

すでに今回の選択自体か間違いだったのではないか。

無線通信自体はこれからのユビキタス社会ではますます重要になっていく。何もそれは人が使う必要はない。

ウィルコムのデータ通信のベースはH''(エッジ)と呼ばれた32kbpsのパケット通信。ドコモやアステルが回線交換だったのに対して、データ量に応じた分のパケットだけですみ、そのパケットサイズは決して大きくない。ネットサーフィンや動画閲覧といったものよりも、定型化された電文処理の方が向いているのではないか。また端末コストもイーモバイルやUQモバイルに比べれば安価で済む。そう考えると、M2M市場の方が向いていたのではないか。

そうだとするとリソース配分の分野も変わってくる。20倍の速度を実現することではなく、より安価に、どのような環境でも使えるような通信モジュールの開発であったり、応答速度を高めるための仕組の開発だったりという具合に。

かってのPHSユーザーとしては、やはりPHSには残って欲しいのだが…



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