ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

音楽ケータイ「LISMO」がiPodを喰うための5っの課題

2006年01月29日 | コンテンツビジネス
基本的にiPodやウォークマンと携帯は融合できるだろうと思っている。それはこれまでもこのブログで書いてきたことだし、携帯電話としW31SAを選び30曲ぐらいの楽曲をSDカードに入れているし、通勤時にFMを聞いたりもしている。しかし同時にiPodを愛用する立場からすると、やすり「音楽ケータイ」が真の意味でDAPのようになるためには、まだまだハードルが高いと思う。auのLISMOに関する記事を読むと、かなり工夫を凝らされているなぁ、とは思うものの、まだまだDAPとしてPCユーザーを取り込むまでには遠いのだろう。

これだけ普及している携帯電話をどのようにPC側に取り込むかということについては、さまざまな取組みが行われている。最近の動きとしては、Vodafone Live BBとして「超流通」に取り組んだり、MOOCSがSD-DRMを利用した音楽配信をしていたりするのだけれど、いずれにしろパッとした話をきいたことがない。果たしてこれだけPCも携帯も普及しているのに、この連携がうまくいかないというのは何が問題なのだろうか。とりあえず気になる点を上げてみた。

1)ユーザー層の違い:PC中心のユーザーは携帯を利用するが、携帯中心のユーザーは携帯だけで完結している

2)PCと携帯との接続の問題:あくまで携帯中心のユーザーは「着うたフル」などで取り込めるとして、これからの課題がPC中心のユーザーをどう取り込むかだと考えると、iPodと携帯電話との違いを考えてみるのが分かりやすい。そう考えると、iPodはPCと接続するだけで「充電」と「管理APとの同期」という2つの行為を実現する。現時点で携帯電話とPCとの接続形態を確認することはできないのだけれど、USBを通じたPC上の管理AP「au Music Port」と携帯の同期と「充電」は別になるのではないだろうか。

仮にPC上の「au Music Port」を自宅や職場のPC上に用意したとすると、それと同期させるためだけにUSBに接続するというのはナンセンスだ。既に携帯は時計代わりや連絡をとる手段として常に傍にある存在である以上、それはiPod以上に「充電」という行為とPCとの「同期」、いつでも時間の確認やメールチェックといった行為が行われる存在でなけれどいけない。これがバラバラだと「使いにくい」と感じてしまう。

またSDカードなどの外部メモリーカードをコンテンツの保管の中心に据えるのか、携帯の内部メモリーを中心に据えるのかも大きな問題だ。外部メモリーの場合、ユーザー側でメモリー容量を変更でき(本体価格に反映)、またメモリーカード自体でのバックアップが可能になるが、キャリア側の統制がとりにくくなり、MOOCSのようなサービスが登場する可能性がある。かといって内部メモリーを中心にするとiPod shuffleですら1GBの容量をもっており、これに対抗するメモリーを用意すると本体価格に反映してしまう。

3)携帯のハードウェアとしての問題:これは大きく2つ。1つは携帯電話のデザインがそもそも音楽視聴に向いていないという問題。iPodの場合あの「スクロールホイール」という存在は大きい。楽曲を選ぶにしろ、さまざまな設定をするにしろその操作性は「音楽を聴く」という観点からは非常に利用しやすい。しかし現状の携帯はどうだろう。すくなくともW31SAをミュージックプレーヤーとして利用する場合、「操作性」は難ありといえる。これを各メーカーの問題とするのか、通信キャリアとして統一の仕様にするのかは普及に向けての大きな課題だと思う。

またもう1つの課題として、携帯からイヤホンやヘッドホンに接続する際の接点の「脆弱性」も大きな問題だと思う。そもそも携帯電話でヘッドホンに接続するユーザーが少なかったということもあるのだろうが、その接続端子の脆弱性はかなり問題だ。しかも通常のミニジャックがそのまま使えないというのも問題だ。

4)コンテンツ・サービスの問題:1つは「音質の悪さ」。LISMOの場合、着うたフルと同じく「HE-AAC(aacPlus)」を利用するとのことだが、正直、音質がいいとはいえない。音質にこだわるなら「着うたフル」品質では問題があるし、かといってエンコードレートなどのパラメータを変えれば、携帯特有の利用シーンである「着うた」との整合性との問題もある。このあたりは今後も課題となるだろう。

またiPod対策、PCユーザー対策を考えた場合、MP3などのファイル交換系をサポートしないというのは普及にむけての阻害要因以外の何物でもない。もちろん違法COPYを容認するわけではないが、iTunesが普及した理由の一つとして、(ファイル交換で利用される)MP3に対する寛容な態度があったことは間違いがない。それをサポートしないサービスというのは、そもそも普及しないのではないだろうか。

もう1つ。PC系で注目を集めているPodキャスティング的なサービスに対するサポートが見えない。但しこれは「Ezチャンネル」のようなそれに近いサービスもあるので「音」「定期更新」「PUSH」という部分でいかに普及させるかが課題だろう。特に有料コンテンツとなると、PCユーザーからするとそれだけの「価値」を提示する必要があり、はたしてこの辺りをどのように提供していくかも課題となる。

上記とも絡むのだが、所謂、iTMSと同じように個々の楽曲の販売というスタイルをとるのか、聴き放題のサブスプリクシヨンサービスを目指すのかという問題もある。

5)将来に向けた課題:今回の「LISMO」をみてもいえるのだけれど、「ならでは」のサービスが弱いというのが1つ、もう1つは「ネットワーク」をどういかすかといことが課題となる。

仮にiPodと同じ機能を「携帯電話」に搭載できたとしてもそれでは「乗り換え」の動機にはならない。それだけの価値を提供できなければならないのだけれど、それが「着うた」だとするとまだまだ弱いだろう。「着うた」は「着うた」、DAPは「iPod」だと意味がないからだ。

また以前から書いているけれど、基本的にはこれだけブロードバンド環境が整ってしまうと、PCのハードディスク上とネットワークのホスティング上にあるファイルを区別する必要はないだろうと思う。とすれば、本来、PC/携帯とのやり取りをスムーズに実現するためにはネットワークを通じて行うほうがスムーズなのだろう。このあたりの取組みを何処まで行うかが課題となる。まぁ、現実的にはWIMAXが普及し、3Gと無線LANとの区別がなくなった後ぐらいでないと実現しないのであろうが、サービスとして考えた場合、どのタイミングでどのサービスを提供するか、というのは難しい問題だ。先のないサービスは一時的な収入でしかないし、かといって先を見すぎれば、ユーザーがついてこない。将来については大きな課題となるだろう。

おそらくこの5っの課題について何らかの妥当な「答え」を出さないと、音楽ケータイがiPodを喰うことはないのだろう。



 KDDI、「iPod/iTunesキラー」の音楽サービスを開始

 「iTMS」も「MSN Music」も日本では成功できない?!

 本命上陸!iTMS、日本市場攻略の課題

 iTMSの終わりの始まり



コメントを投稿