ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

千年女優:実写では体験できない幻想的恋愛物語

2006年02月05日 | 映画♪
例えばジャパニメーションの影響力がこれだけ凄くとも日本国内でもアニメ映画を馬鹿にする人は多数いる。まぁ、確かにアニメとの出逢いの多くが「サザエさん」「ドラえもん」の家族向けか少年・少女向け番組が殆どであり、そのイメージを引きずっている限り、「子供だまし」的な期待しかできないだろう。しかしこの「千年女優」はロボットもでないし、未来が舞台なわけでもない。にも関わらず、実写ではこれだけの表現はできないという代物。とりあえず一度は「体験」してみてもらいたい作品。




かつて一世を風靡した大女優・藤原千代子。三十年前忽然と銀幕から姿を消し、人里離れた山荘でひっそりと暮らしていた彼女の元に、時を越えて古びた小さな鍵が届けられる。鍵が記憶の扉を開くように、千代子は昔を語りはじめる。漕ぎ出すは、記憶の大海。その物語は千代子の生きた現実の時の流れから溢れだし、 “映画"という幻想の海流を通って、太古から未来まで広がってゆく。そして、閉ざされた想い出に隠された千代子の情熱が浮かび上がってきた……

この映画の魅力は何と言っても1人の女優の半生(現実)と彼女の出演した映画作品(虚構)とのが渾然一体となって、数百年という時を越えての恋愛物語として成立しているところだろう。アニメも虚構じゃないかといってしまえば実も蓋もないのだけれど、物語の中で成立している「現実(千代子の半生)」と「虚構(映画)」とが見事に繋がっているところだ。しかもカメラマンが常に存在することで、「幻想物語」として吸収されてしまう寸前のところで、現実とのつながりを維持するという、微妙なバランスをとった物語だ。この巧みさは実写で行うにはかなり難しいだろう。

昔、脚本を書いていた時期があって、千年という時間を経ても続く「愛情」をテーマに書けないかなぁ、と考えていたことがあったのだけれど、まぁ、これがなかなかべたべたな展開しか思いつかない(苦笑)。例えば竹取物語の姫と帝が時を経て、江戸時代やあるいは現代でも出逢い同じような想いを語る…なんて考えただけでも恥ずかしくてしょうがない。輪廻転生か、オカルトか、いずれにしろ少女漫画の世界ぐらいがいいところだろう。

そういうこともあって、この伝説の女優・千代子が「現実」と「虚構」の狭間を駆け抜けながらまさに千年を越えて「愛しい君」を追いかけつづけるというのは、もうこのアイデアだけで「やられた!」という感じ。いやはやお見事です。

現実の男女であれば、おそらくこんなに長く名も知らぬ相手を想いつづけることなどなく、離婚・バツイチ・バツニというのが日常化していることを考えると家族制度さえも固定化されるものではないし、むしろこれだけconvenientな世の中であれば、その都度、必要な相手を補充するくらいの世界になっていくのだろう。そんな中で、これだけ時を越えながら同じ「想い」を貫けるのは、やはりこの物語自体が「虚構」だからなのだろう。現実の男女は「寂しさ」を埋めるためだけでも「誰か」を求めてしまうのだ。

この映画の紹介を見てみると「パーフェクト・ブルー」のスタッフが再結集とあった。あまりストーリーは覚えていないのだけど、竹内義和原作で一部のマニアでは話題になった作品だったと思う。確かに「絵」やその展開などが所謂「アニメ」風ではない点なども何となく似ている気がする。そういう意味で、アニメマニアじゃない人にも「体験」してもらいたい映画だ。


【評価】
総合:★★★☆☆
このアイデアにやられた!:★★★★☆
お薦めは欧州映画好き?:★★★★☆

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