ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

iTMSの終わりの始まり

2005年09月04日 | コンテンツビジネス
何と言っても今年の音楽業界は「iTMS」が中心に動いているといってもいいのだろう。所詮、Appleのシェアなんて…とたかをくくっていたら、今では行くも地獄、戻るも地獄といったところか。iTMS-Jの4日間で100万曲を販売という衝撃もようやく収まり、とはいえMoraやgoo Music Store、ORICONなど既存の音楽配信事業者の記録を大幅に上回って販売数を伸ばしている。そんな状況もあってか、SMEもiTMS-Jへの楽曲提供を検討しているとの記事が。まぁ、検討はしていても本体のSONYがどの程度の発言力を行使するか次第だろう。

「iTMS-Jへの楽曲提供は検討している」――SME、音楽流通への考え

音楽メーカー、所属アーティストの立場としては、売れる場所に参入したいというのが正直なところだろうし、実体はともかくも「iTMS」のイメージがいいだけにそこで作品を販売したいというのは本音だろう。しかしメーカーとしてのSONYの立場としては、これ以上、iPod/iTMSというデジタルコンテンツを配信するプラットフォームの拡大は避けたいところだ。このあたりがジレンマなのだろう。

が、その一方で、どうやらこれだけ影響力が大きくなった「iTMS」に対して、米のレコード会社は自分達の利権を拡大するために強権を発動することも考えているようだ。

ITmediaニュース:iTMSとの契約更新を渋るレコード会社

この記事にも書かれているように、実際のCDを販売する際の製造コスト・物流コストを考えると、価格の70%が手元に入るiTMSでの販売が決して効率が悪いわけではない。iTMSの販売力を考えると販売チャンネルとしては決して悪くはないのだ。しかしレコード会社がこのような態度をとるのは何故か。

この記事にも軽く触れられているように、10曲入りのアルバムを作ってもiTMSではその中から2~3曲だけを購入され、結果として、アルバム1枚の価格よりも顧客あたりの購入単価が小さくなっているからだろう。あるアルバムの楽曲の購入者が100人いたとして、iTMSでは2曲(300円)×100人が売上となるわけだが、これがもし10曲入りのアルバムだと100人の購入者とならないかもしれない。しかしレコード会社の人間からすれば、どうしても100が10曲入りのアルバム(3000円)を買ってくれていたはずだ、と考えてしまうのだろう。

もともとiTMSのモデルとは、P2P対策的な意味合いはあっても、コンテンツのコモディティ化の圧力が強いモデルであったのだから。そういう意味では、247MUSICの代表取締役 丸山茂雄さんの話は的を得ていると思う。

「音楽配信発のビッグアーティストを生み出したい」--丸山茂雄氏の挑戦

結局のところ「10曲入りのアルバム」というパッケージ的な発想の作品作りと、iTMSのような、売れる曲だけを提供できればいい、10曲入りのアルバムでなくても3~4曲いい曲ができた段階で販売を開始すればいい、といったモデルとの齟齬が表れたということなのだろう。

以前、「iPodが「アルバム」のあり方を変える!」でも書いたように、iTMSは決してアルバムのような作品性の高いものを求めてはいない。作品のテーマや流れなどにあわせて1曲目から10曲目までをトータルでプロデュースされたものを、それを味わいながら聴くものではないのだ。アーティストの想いとは別に、利用者が気に入った曲をぶつ切りに取り出し、勝手に選曲し、プレイリストを作成し(あるいはiTuneが勝手に作成し)再生させるだけなのだ。利用者優位といえば聞こえはいいが、音楽をただの消耗品として扱っているに過ぎない。

iPodが「アルバム」のあり方を変える!

このレコード会社の抵抗もむなしいものに終わるだろうとは思うものの、そう考えると、iTMSモデルというのは決してこれからの社会最適モデルではないのだろう。確かにiTMSはこれまでの音楽配信ビジネスを大きく変えたものの、徹底して利用者優位のモデル、つまりユーザー同士が自分の好みのプレイリストを作り、あるいはDJとなり、互いに交換しあうというモデルになるには、この1曲毎に購入するというモデルはあまりに障壁が高い。そうしたモデルを徹底するのだとしたら、やはりサブスプリクションサービスへの移行が必須になるのだろう。

またアーティストにとっても、シングルのような曲をただ再生産していくだけのアーティストならともかく、自分の感じたものを「売れる/売れない」とは別の軸で表現していくことを指向するアーティストや新しい時代を切り開いていく試みを続けるアーティストにとっては、iTMSは決して居心地のいい場所ではないだろう。彼らにとっては表現していく場をネット上の別なサイトに求めていかねばならないのだろう。

実はプレイリストの普及やあるいは埋もれてしまっている曲との再会といったものは、まさにiPodがもたらしたものだ。そういう意味で、iPod/iTMSはこれからの音楽配信サービスのあり方に向けた過渡的なサービスだったのかもしれない。






1 コメント

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Unknown (beer)
2005-09-05 13:08:04
と、思ったらこんな記事が。



「ソニー、ネット音楽配信でアップルに楽曲提供」

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20050905i301.htm



そんなにすんなりいくのかどうか。。
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