日本沈没(1973)：東日本大震災で見出された希望

この時期にこんな映画を見るなんて不謹慎…と言われそうな気もするが、TSUTAYAでも全てレンタル中といった感じで、よくも悪く関心が高くなっているのだろう。選んだのは1973年版。映像的には古臭さも感じるが何といっても、これだけのスケールの作品を描こうとした意気込みは凄い。


日本沈没(1973) [DVD]

【ストーリー】

海底開発ＫＫに勤める深海潜水艇の操艇者・小野寺俊夫は、小笠原諸島北方の島が一夜にして消えた原因を突きとめようと、海底火山の権威、田所博士、幸長助教授らとともに日本海溝にもぐった。潜水艇“わだつみ”が8000メートルの海底にもぐった時、彼等は異様な海底異変を発見した。深海には、巾広い溝が果てしなく延び、乱泥流がもくもくと噴出していた。この巨大な暗黒の中で、いま、何かが起りつつあった…。(「goo映画」より)


【レビュー】

さすがに今から40年近くも前の作品ということで、映像的には「難あり」だったりするのだけれど、これだけのスケールの作品を製作しようという意欲が凄い。もともと小松左京が日本人が母国を失い放浪の民になったらどうするかという発想からスタートした作品。そういう意味では、この作品自体は「流浪の民」になるまでの前章といったところ。映画化に際しても、そうした「続編」が意識されていたのだろう、エンディングはある意味、中途半端なままだ。

しかしそれでも田所や山本総理、渡老人たちの苦悩は十分にドラマとなっている。この続きも見たい！というのが正直な感想だ。

さて、実際に「日本沈没」の可能性はあるのだろうか。

大きな地殻変動や地震がプレートの動きによって引き起こされるものだと考えるならば、その可能性は高くない。

日本は4つのプレートの境界線上に位置する。今回の東日本大震災は、太平洋プレートが北アメリカプレートに沈み込もうとして起こったもの。本来であればそうしたプレート面でも震源地となりうるポイントは特定されていた。しかし今回の地震ではそれらの震源地を含む南北400km、東西200kmの断層帯が破壊された可能性が高いという。そのために想定していない巨大な地震となったのだと。

日本ではそれ以外にもフィリピン海プレートが同じように北アメリカプレートやユーラシアプレートの下に沈み込もうとしている。そうした4つのプレートの微妙な力関係の上に成立している。また関東平野は太平洋プレートの断片がそのまま残存してしまった「関東フラグメント」上に存在しているという説もある。4つのプレート上のバランスの上に浮かぶ小船――こうした不安定な状況が日本を世界でも有数の地震大国たらしめている。

日本列島そのものは、新潟から関東以北は北アメリカプレートに、以南はユーラシアプレート上に存在している。またそもそも日本列島がプレートの衝突による隆起によってできあがったとされており、この作品のように日本が「沈没」するかというと、むしろ隆起しており、そうはなりにくい状況だ。

しかし今回の東北大震災が4つのプレートの力のバランスを崩してしまい、様々な場所で歪をもたらすこととなった。余震とは別の「誘発地震」を多数引き起こし、その結果、3月15日には富士山の真下でM6.4の地震を起こし、茨城、新潟など今回の震源地から離れた場所でも引き続き地震が続いている。房総沖や南海トラフへの影響も叫ばれている。

日本が沈没する可能性は少ないかもしれないが、全国的にM8クラスの地震が起こる可能性があり、また東海・南海・東南海連動型地震に繋がれば、関東から名古屋、和歌山、四国までが大きな被害を受ける可能性がある。また東南海地震では、大阪湾まで津波が来ることが予想されており、太平洋側の主要都市が都市機能を失う可能性がないわけではない。

「流浪の民」にはならないかもしれないが、国内での自分たちの家や土地を失うことは十分に考えられるのだ。

しかしどうだろう。

この映画では、逃げ惑う人々の姿には怖れや不安といったものばかりが描かれていた。山本総理や小野寺が「カミカゼ」と呼ばれるほどの獅子奮迅の活躍をしたかもしれないが、多くの人は受身でしかなかった。

しかし実際には世界からは賞賛されるほど、冷静な行動をし、被災者どうしが助け合い、多くのボランティアが活躍している。皆が助け合おうとし、できる範囲で協力をしようとしている。山本のようなリーダーシップはなかったかもしれないが、現実には映画にはなかった「希望」が存在する気がするのだ。


【評価】

物語の構想力：★★★★☆
さすがに映像は…：★★☆☆☆
続編が見たかった：★★★★★


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