ビールを飲みながら考えてみた…

日常の中でふっと感じたことを、テーマもなく、つれづれなるままに断片を切り取っていく作業です。

B向けSIerの思い込み

2012年02月22日 | ビジネス
C向けのネットサービスの担当からB向けの法人営業部門に来て思うことは、昔と違って今はC向けの方が先にいっているのだなぁ、ということ。

IT業界の移り変わりの速さは尋常ではないけれど、特にここ5~10年くらいは少人数のベンチャー企業が次々に新しいサービスを生み出したし、ソーシャルメディアの興隆はそれまでの大規模なDBや材料を自社で用意しなくてもネット上で収集することを可能にし「資本」よりも「アイデア」こそが「成功」の条件としたし、PCからガラケー、そしてスマホへの流れは、中心となるデバイスが変わるたびに、サービサーも主役交代をもたらしてきた。

良くも悪くもそうした「新しい時代へのチャレンジ」はC向けの市場そのものを活気づけてきたし、ベンチャーから個人まで、中心となるプレイヤーも新陳代謝を行なわれてきたのだ。

それに対してB向けを相手にしているIT企業はどうだったか。もちろん中心となる技術も変化してきているし、IT機器はデフレ化しているし、様々なシステム化が進んできたとも思う。お客様である企業の経営環境は厳しく、コストダウンの要求は決して甘くはないし、投資対効果に対する意識は相当強い。

しかしそれでもそこで大きくプレイヤーが変わったり、前提となっている意識が10年前と大きく変わっているとは思えない。いや、お客さんの方では変わりつつあったとしてもSIerの側の意識が変わっていなかったりする。

例えば「セキュリティ」に対する意識。もちろん個人に比べて企業が持っている情報資産は大きく、保護しなければならないことは当然だ。顧客の個人情報が漏れればその企業の浮沈にさえ影響する場合もある。しかし個人の側がそうしたリスクを踏まえても、より利便性や快を求めて、ネット上の新しいサービスを活用し、その可能性を大きく伸ばしているのに対して、企業の側は「守り」の意識が強すぎて、十分にITを活用しているとはいえない。

あるいはこういう言い方ができるかもしれない。企業のシステム構築を担うSIerの側が、以前と同じような(セキュリティ)意識のまま提案・構築を行うために、より利便性が高いネット上のサービスや機能を企業の側が使いこなせずにいる、と。

お客さまの求めているのは(これまで同様)カスタマイズがされたオンプレミス型のシステムだ、セキュリティを考えるとクローズドなネットワークでなければならない、安定した運用のために十分な冗長構成が必要だ…しかしこれらは実はSIerの側のビジネス構造を反映した「思い込み」に過ぎないのかもしれない。

パブリック・クラウドを利用すればオンプレミスの何分の1の売上しか上がらず、インターネットVPNを使ったネットワークでは通信キャリアの違いは不要になり、冗長化が不要となれば収入が少なくなる。

そしてそうした「思い込み」は同時に新しいものに対する「感度」さえも奪っていく。個人が作成したiPhone/iPad用のアプリが企業向けに作っているシステムと同等の機能を提供する、GoogleやSFDCを利用すれば1からサーバを用意する必要もない。しかしそうした状況にさえ気づかず、「思い込み」で考える。お客さんも同様に考えているうちはいいかもしれない。しかしやがてお客さんの方が気付くかもしれない。そうなるとSIerの行動はただの独りよがりとなってしまう。

C向けでどんどん進んでいく「革新」にどうキャッチアップしていくか、そうした感性をどのようにB向けにつなげていくか。それがB向けのSIerにとっての課題かもしれない。

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