文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:大工の棟梁に学ぶプロジェクトマネジメント

2015-02-19 22:06:44 | 書評:ビジネス
大工の棟梁に学ぶプロジェクトマネジメント (マイナビ新書)
クリエーター情報なし
マイナビ


 プロジェクトマネジメントを大工の棟梁の仕事に結びつけた、目の付け所が面白い「大工の棟梁に学ぶプロジェクトマネジメント」(白鳥美子:マイナビ新書)。確かに、家づくりとは、ひとつのプロジェクトである。だから、大工の棟梁は、いくつものプロジェクトを成功に導いてきた実績のあるリーダーだということで、畑違いのプロジェクトリーダーたちにとっても、学ぶべきことが多いのだ。

 ここに紹介された、棟梁たちの言葉には、最近のチームワークだとか管理だとかを口を酸っぱくして言うような風潮に慣れているものからは、少々奇異に映るかも知れない。例えば、大工の棟梁は、チームワークなんか考えたことはないと言う。やるべきことをきっちり示してやれば、どうにかなる。大事なのは、完成後のイメージを仲間たちと共有するということなのだ。また、いちいち指図してもいけない。相手もプロなのだから、信用することが大切であり、細かいことを言い過ぎないということだ。チームワークとは決して馴れ合いではない。一人一人は、プロなのだがら、自分の仕事をきっちりこなしていかなければならない。リーダーの仕事とは、メンバーの一人ひとりが、プロとして自分の力を発揮できるようにすることなのである。

 ただし、本書にあるように、頼んだ内容がうまく伝わったかは、くどいほど確認しないといけないし、任せても、うまくいってなさそうなら助けることもしなければならない。ポイントごとに確認をすることも大切だ。人材育成のためには、若い者に、まだ無理と思ってもやらせてみることも必要である。任せるということは放任しておくことではない。そして、棟梁たちの言っていることで一番大切なのは、自分が責任をとるという覚悟を持つということだろう。これなくして、形だけ真似ても。決してうまくいきっこない。

 本書に納められた、棟梁たちの言葉には、大工の仕事ではなくとも、そのまま使えそうなリーダーとしての心構えが沢山詰まっているのではないだろうか。もちろんどんな世界のリーダーもピンキリである。本書が元にしているのは、6人の棟梁たちからのサンプリングであり、すべての大工の棟梁が同じようなリーダーシップをとっているかはわからないが、書かれていることは概ね妥当だと思う。何らかのプロジェクトを任されている人には、チームをどのように運営していくかについて、多くの示唆が得られるだろう。

☆☆☆☆

※本記事は、姉妹ブログと同時掲載です。

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