美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




川上弘美の『センセイの鞄』を読みました。昨年、小泉今日子と柄
本明を主演にしたドラマを観てから、何となく気になっていた小説
です。

川上弘美は何度か挑戦した事があったのですが、なかなか読み進め
ることができず、苦手にしていたのですが、日経の夕刊に週一で連
載されていたコラムを読んでから、何となく気になる作家さんでし
た。平易でじわっと温かみのある文章なのだな。昨年、ウィスキー
のおまけについていた小さな本
も、なかなか味がありました。

少し子どもぽいところのある主人公と、その高校時代の恩師の淡い
淡い恋。別に面白いこと話すわけではないけれど、一緒にいると、
どこかほっとする、そんな関係...この短編集は小さなエピソードを
少しずつ積み重ねながら、二人が心通わす様子を描いています。

やっぱり年齢の離れた先生にあこがれる、というところがミソなの
でしょうか。自分とは遠い価値観を持つ人、長い長い時間をかけな
がら培われてきたその生きる姿勢に主人公が惹かれる様子はとても
分かる気がします。

また、暗い過去を引きずっている初老のセンセイが、若い女性の、
若いが故の素直な様子を好ましく思う気持ち、それも分かるような
気がします。

年をとったからといって、必ずしもいつでも大人でいるわけでもな
く、巨人嫌いの教え子を執拗にからかってぎくしゃくしてみたり、
教え子が若い男性と連れ添うのをみて嫉妬に似た感情を抱いてみた
り、そんなところがセンセイの人物造形の魅力になっているように
思いました。

最後は必ずしもハッピーな終わり方ではないけれど、嫌な感じはし
ない、余韻のある小説だと思いました...

・センセイの鞄のDVD
・センセイの鞄の文庫本

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