美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




主人公は大衆向けの番組制作に背を向け、社会派のドキュメンタリ
ーをこつこつと撮影するテレビディレクター、一方、義理のお兄さ
んは飛ぶ鳥を落とす勢いの敏腕プロデューサー...そんな兄貴にコン
プレックスを持ちつつ、当の義兄を追ったドキュメンタリー番組を
作るはめに陥る不条理を、ウディ・アレンが例のごとく演じていま
す。

奥さんとも離婚寸前のテレビディレクターがふとしたきっかけで知
り合った女性に心寄せる物語が軽い罪、軽い気持ちで付き合い始め
た恋人につきまとわれる高名な眼科医の物語が重い罪、この映画で
は二人の浮気を軸にして、悲喜こもごもの人間模様が展開されます。

人生の危機的状況を迎えた二人は、司祭に打ち明け、姪っ子に打ち
明け、やくざな弟に打ち明け、妹に打ち明け、それぞれに悩みを抱
えながらも、様々な決断をしていきます...

主人公のテレビディレクターはある哲学者を追った映像をひそかに
撮りためています。彼の言葉を心の支えして、ようやくテレビ局に
その映像が売れるかも、という矢先に、哲学者はいなくなってしま
います...呆然とする主人公...

ラスト、重罪を犯した男は危機を脱し、軽い罪さえし損なってしま
う男は、相も変わらず迷いの中にいます。そこにかぶさる哲学者の
ナレーション...

> 人間は生きる限り苦悩して決断しモラルを選択します
> 重大な選択もありますが大半はささいな選択です
> しかし、我々はじぶんの選択を通して自分を知ります
> 選択こそがその人物の総決算なのです

自分というものを考えたときに、それはよく分からないものなのだ
けれど、日々の小さな選択の積み重ねで今の自分が作られている、
という言葉はよく分かります。

> そしておそらく人間は一生懸命に努力することによって
> シンプルなテーマから喜びを発見します
> 例えば家族や仕事からそして、希望から...

シンプルに、前向きな力を感じます...

ウディ・アレンのフィルモグラフィーの中では地味な作品ですが、
『生きる』ということにこれだけこだわった作品は、ないのでは
ないかな...かめばかむほど味の出る映画...

ウディ・アレンの重罪と軽罪


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