その時、私は...(サンドイッチ、幸せな人たち、船の版画...)

誕生日の今日は昼まで寝てました。やにはに起きて、出かけたのは
恵比寿の写真美術館、そして目黒の庭園美術館へ...庭園美術館の八
木一夫展を観る前に上大崎の交差点に面したカフェでちょっと腹ご
しらえ。ギネスとサンドイッチ。

休日の昼ごはんにサンドイッチをつまみながらビールを飲むのが何
となく好きです。最近、食欲のないことが多いのですが、サンドイ
ッチがお腹にたまる感じがとてもいい。顔が赤くなる性質なので、
昼間から飲むのはどうかとも思うのですが、まぁ、いいではありま
せんか...

表に出ると何となく晴れてます。青空まで見える。気持ちがいいも
のだ。

八木一夫展はかなりインパクトがありました。『ザムザ氏の散歩』
は思ったよりも小さな作品でしたが存在感があります。展示の仕方
も素材ごとにまとめてあります。土を焼いた柔らかい茶、陶板の黒
々とした鈍い光、外光を受けた白い肌理...こうした多様な作品をい
かに魅力的に並べていくのか...学芸員冥利につきる仕事ではないで
しょうか。

一通り観たあと、新館の喫茶室に行きます。私はこの喫茶室がとて
も好きで、展覧会を観たあとは決まって誰もいない庭をぼけっと眺
めることにしています。しかし、何だか今日は賑やかだなぁと思っ
たら結婚式。普段は立ち入れない喫茶室前の庭で、趣味良く着飾っ
た人たちが談笑しています。集った老若男女の間を飲み物をお盆に
持った黒服の人たちがすり抜けて行きます。随分と大きな結婚式な
のだな。遠くの青空を見つめながら、幸せな人たちなのだなぁ...

てなことを考えながらホットコーヒーに手をつけようとすると、
カタカタカタカタカタカタカタカタ...

何だ何だと思っていると建物がきしみ、
キシキシキシキシキシキシキシキシ...

振り返るとシャンデリアが小刻みに震えています。
キリキリキリキリキリキリキリキリ...

お庭で寛いでいた人たちは緊張した面持ちです。そこは黒服が手際
良く誘導。皆、建物から離れていきます。皆さんとても落ち着いた
所作で、しばらくすると、また、おしゃべり。立派だなぁ...

建物の中でもシャンデリア付近にいる人たちは離れるように館員の
方が誘導、ここら辺の危機管理はしっかり出きているのだな。さす
が庭園美術館...

ふと、振り返ると緊張した面持ちの新郎新婦。とても若い。ただで
さえ緊張するところに地震があったわけですし...しかし、こんなハ
プニングもちょっとした思い出になるのではないかな。あるいは緊
張のあまり、地震には気付いていなかったりして...背の高くておっ
とりした新郎と、小柄で気の強そうな新婦がゆっくりとお庭に出て
いきました...

と、ここまで見届けたところで警備員さんが、地震の影響で本日は
もう閉館するのだと告げにきました。いろんなことがあるものだと、
庭園美術館を後にしました。

地下鉄が動いていないので広尾まで散歩。商店街の入り口の額縁屋
さん(加藤額縁画材店)に初めてお邪魔しました。ここは Moebon さ
んが教えてくれた額縁屋さんです。何かお客さんは近所の人たちが
多くて地震のことをあれこれ話しています。私も酔っていたのが手
伝ってご主人とおしゃべり。展示されている星襄一さんの作品を中
心に、額縁の話などをあれこれきかせてもらいました。

ゆっくりと店の中をみせてもらっているうちに、船の版画がバーゲ
ンで出ているのを発見しました。森田睦さんという、そんなに有名
な人ではないようですが、縦長の淡い微妙な陰影をたたえた緑を背
景に、画面をこちらに向かってくる抽象化されたヨットと、それを
追うかのような遠くの太陽とが、何だかとても心地良く、即、買っ
てしまいました。

とてもいい買い物をしたような気がします。店の人たちも皆、感じ
が良かったので、また、遊びにこようと思いました。

それから六本木まで出てから、晩飯、地下鉄で恵比寿まで行くと、
ちょうど電車が動き始めた様子。今まで止まっていたのか...
そんなに大変な地震だったのかしら...

何はともあれ、無事に帰ってくることができた次第でした。