美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




というわけで季節の映画、秋篇です...

秋といえば、夏のギラギラした陽射しから、清みきった空気にいろ
んなものがはっきり見えてくる、だけど、だんだんと日暮れていく
ような、そんな淡いイメージを感じます...

髪結いの亭主』なんてどうでしょう。男と女の映画なので、きわ
どい描写もあるけれど、そこはやんわりとソフィスティケートされ
た手際で、においとか、さわった感じとか、五感にうったえるとこ
ろの多い映画です。子どもの頃から髪結いの女性にあこがれていた
少年が、その夢をかなえる映画...

映画の中の台詞から...
> 人生は単純だと父は言った...
> 物でも人でも、ただ強く望めば手に入るもんだ...
> 失敗するのは望み方が弱いからだ...と

初めてこの映画を観たときに、海辺で遊ぶ子どもたちの背景に流れ
るこのモノローグに、なぜか涙ぐんでしまいました...

パトリス・ルコントはフランスの映画監督です。私が観た何本かの
映画はとても神経にこたえる映画で、そんなに得意な監督ではない
のですが、この『髪結いの亭主』はとても幸せな空気が感じられる
映画です。


アニー・ホール』も主人公の子どもの頃の思い出から、アニーと
の出会いと別れ、そして再会を描いた映画です。季節でいうと、や
っぱり秋な感じです。私は映画の映像の質感はとても大切だと思っ
ています。いわゆるハリウッド映画を苦手とする理由のひとつとし
て、どんな映画もピカピカつるつるでのっぺりした映像に見えるこ
とがあげられます。なので、この映画のくすんだ映像はとっても好
ましい(まぁ、時代もあるのでしょうが...)...

大事件がおきるわけではないけれど、くすぐりどころもたくさん。
ニューヨークを愛するウディ・アレンが描いたニューヨークの風景
はとても美しい...
# いかにも大嫌いなロスの描き方が、これまたおかしい...

新作の『マッチポイント』はロンドンで製作されたようですが、ち
ょっと残念だなぁ...


三本目は『ふたりのベロニカ』、十五年前に観たきりで、DVDを待ち
遠しく思っていたのですが、11月の終わりに、遂に発売になるそう
です。とても嬉しい...

二つの場所に生まれた二人のベロニカが、互いの存在を感じる...
というような、おとぎ話のような映画です。監督はクシシュトフ・
キェシロフスキ、彼の映画は心理的にちくちく作品が多いのですが、
この映画はセピアの色調がガラス細工のようで、とても優しい視線を感
じる映画...と、記憶しています。

今見たら、どんな印象を受けるのだろうか...


髪結いの亭主
アニー・ホール
ふたりのベロニカ


蛇足
秋を思い出させる言葉...
> その時までの私の世界は、きっと原色だったろう。
> けれど、その原色は淡いニュアンスのある色に変わろうとしていた。
センチメンタルな旅、冬の旅』より...

コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
Unknown (Unknown)
2006-09-19 23:27:17
『髪結いの亭主』、執拗な愛情に対してとっても幸せそうにしていた奥さんの、表情が印象的です。色々あったんだろうなー、とか。

さて私の秋の夜長の映画ですが。

『ルートヴィヒ』、10月にテアトルタイムズスクエアでヴィスコンティ特集やります♪

『LOVERS』(チャン・イーモウ)、色彩豊かな映像美の作品。

『眠狂四郎無頼剣』、実際には見てませんが市川雷蔵好きなので。月夜のイメージがあります。

 
 
 
 (ogawama)
2006-09-19 23:28:34
すみません、名前入れる前に上記コメント投稿してしまいました。
 
 
 
Unknown (lysander)
2006-09-20 01:28:58
ogawamaさん

コメントありがとうございます。



> 執拗な愛情

執拗...とはちょっと違うような気がします...



ヴィスコンティ特集やるのですね。

ルートヴィヒ、今の体力では無理だろうなぁ...(^^;

でも、あの映像は劇場で観るべきですよね。
 
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