美術と本と映画好き...
徒然と(美術と本と映画好き...)




先週の土曜日に印刷博物館の講演会に行ってきました。明治大学教
授の森洋子さんの講演会です。テーマはブリューゲル...

プランタン=モレトゥス博物館はベルギーのアントワープにありま
す。十六世紀にクリストフ・プランタンによって創業された印刷所
跡を博物館にしたところ。貴重な書物や印刷関連の道具を多く収蔵
しているそうです。

今回の講演は、創業当初のプランタン印刷所と時代を同じくして活
躍したブリューゲルについて、その作品に描かれたアントワープや、
同時代の作品との関わり、その時代背景についてのお話でした。ス
ライド二台を屈指したとてもアナログでビジュアルな講演会でした。

ブリューゲルの画家としての活動は、版画の下絵から始まったそう
です。当然、時代背景が作品にも反映されます。当時はまだ珍しか
った象が描かれていたり、あるいは当時再評価されていたボッシュ
風の絵を描いていたり...そんな摩訶不思議な作品の背景にもアント
ワープの風景が存在していました...

アントワープはスヘルデ川の河口にある港町です。冬の風景では凍
った川の上でスケートを楽しむ人たちも描かれています。当時の絵
画にはこのスヘルデ川とノートルダム大聖堂が多く描かれています。
ノートルダム大聖堂はアントワープのランドマーク。ブリューゲル
の作品の中でものっぽのノートルダム大聖堂がいろいろな形で描か
れていました...

また、アントワープの港には荷揚げ用のクレーンが多く設置されて
いたそうです。このクレーンはアントワープのシンボル。ブリュー
ゲルの代表作である『バベルの塔』にもクレーンが描写されていま
した。

この講演では展示作品にも触れて、七ヶ国語の日常会話集や、辞書
などが紹介されていました。こういった書物が数百年前からあった
のですね...これらの文献は当時の風俗を研究する人たちには辞書は
欠かせないもので、オランダ語をフランス語を対照させたことわざ
辞典などを使って、それぞれの母国語の微妙な意味の違いから、当
時のことわざに込められていた思いを想像していく様子もうかがい
知る事ができました。こうした作業は本当に好きでなければできな
いのだろうな...

森先生はブリューゲルの絵画に書かれたことわざをひも解いた著作
で知られていますが、こうした細部にこだわる好奇心がなければ、
あれだけの大著はものにできなかったことでしょう。

とても良い講演会でした。

また、このプランタン=モレトゥス博物館は、先週、世界遺産に登
録されたそうです(これ)。

これを機会に、この印刷博物館に行ってみてはいかがでしょう...
プランタン=モレトゥス博物館展は 7/31 まで...

コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
ここはイイですよね (おけはざま)
2005-07-21 00:56:56
こんばんは.



ここは印刷好き・本好きには聖☆オススメの博物館ですよね.



常設展示はまだじっくり見ていないので,また行きたいと思っています.



公私共に,パソコンで文書を作り,送信して終わりってことが多いですが,やっぱ,紙はいいわ!



「紙は長い友達」とはよく言ったもんだ.
 
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