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最低賃金の科学。。
最低賃金、時給平均700円超に引き上げへ |
15円の引き上げ。昨年の14円も近年にない引き上げであって、今回はそれを上回るとしてここに焦点をあてた報道もある。あるいは700円をはじめて上回ったことを強調するものもある。
しかし、労働側の要求は周知のように最低賃金1000円なので、そこを基準にすれば改定案もそれにはほど遠いということになるでしょう。
700円を上回ったとはいっても、1000円に達するには、今回のペースでいってもあと20年はかかるというわけですから、気の遠くなる話です。つまり、いま40歳の労働者は最低賃金1000円の世の中をみずにリタイアしてしまう計算です。これでは現労働者に夢も希望も、そして生きがいも与えることはできないでしょう。先の「朝日」ですら、こう書かざるをえない、最も重要な課題にこたえることのできなかった答申ということができるでしょう。
最大の懸案だった最低賃金が生活保護を下回る「逆転現象」を今後何年で解消するかは明確にできなかった。 |
最低賃金をめぐっては、生活保護基準よりも低い実態が強く指摘され、運動もそれに加わって、最低賃金見直しの際の、生活保護との逆転現象の解消が課題とされてきました。
それにてらしていうならば、今回の改定案でも依然として生活保護水準より低い県があることが重要で、ただちにそれは是正されないといけないでしょう。
生活保護がセーフティーネットだとすれば、それより低い水準の賃金で働かされる労働者の存在そのものが当然、異常だということになる。働いても、最低限の生活を営むに足る賃金を得ていないのですから。これは即刻改められなければなりません。
問題はそれ以外にもあると思います。三大紙もふれていませんが、最低賃金のベースとして考えられている生活保護費の算出方法で、厚労省は極論すれば、ごまかしともとれる手法をもちいています。
「しんぶん赤旗」がこの点を衝いています。
それによれば、指標とすべき生活保護基準は県庁所在地の基準をもちいること、所定内労働時間をもちいて必要生計費を反映させることなどを求めてきたようですが、生活保護基準には県平均値を使うこと、勤労控除を除くなど、生活保護基準を押さえ込むという使用者側の主張を受け入れることになったのです。
その結果が伝えられている、逆転現象は一部しかない、そして生活保護との乖離も最大で68円にとどまったという「事実」です。
この生活保護を下回るのが12地域という点でも、すべての地域で下回っているのが実態という労働側の指摘もあります。厚労省は実態を結果的に甘く見るような指標のとり方でをしているということです。
700円を超えたといっても年収200万円にみたない水準です。これでは、最低賃金制というしくみが、官製のワーキングプアをつくりだすといわれてもしかたがないのではないでしょうか。
また、一方で、大企業は、常々、最低賃金引き上げという話になると、中小企業の経営悪化を理由にあげます。けれど、大企業の利益優先に傾いた最近の景気低迷、そして中小企業に対する単価切り下げこそ問題にされなければならないと思うわけです。
この点では、むしろ、最賃引き上げが内需促進をもたらし、そのことによって中小企業も潤うという構図を私は描くのですが。
生活保護が後退するのか充実するのかが諸制度のベースとなること、そして最低賃金の動向が労働者にとってさまざまな方面に影響を及ぼすことを考えると、15円の引き上げで安堵するというわけには到底いかないと思うのです。
(「世相を拾う」08147)
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