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朝日新聞「資本主義はどこにいく」の語りかけるもの
もし今、この二人が生きていたら。大恐慌下の73年前、その後の経済学を変える「一般理論」を書いた経済学者のケインズと、同じく恐慌を経験し「マネジメントを発明した男」と呼ばれる経営思想家のドラッカー。経済政策に企業経営に、どのような分析と提言をするのだろうか。詳しい2人に聞いた。 資本主義に基づく経済や社会はどう変化するのか。シリーズで考える。 |
こんなリードではじまる。
この企画もまた、表題に端的に尽くされているように、「大不況」の打開の方向をいまだ明確に示しえず、グリーンスパンに借りるなら「100年に一度」の経験なのだから、あたかも拱手傍観し、ただ事態を見守るばかりであるかのような今日の資本主義を問い直す作業の一つであることは論をまたない。だから資本主義は、果たしてどこにいくのか、いきつくのだろうかということだ。
シリーズとある。初回は、ケインズとドラッカー。
一般的になぞってみれば、新自由主義の破綻が明確になったといわれるくらいだから、それならばケインジアンの登場、こう推測できるはずで、伊東光晴氏の登場である。
まちがってならないのは、ケインズとドラッカーが今日を事態を、どう分析し、打開策を提起するのか、ということではない。むろん2人は過去の人だから、そんなことはできないし、2人を知悉する人物が、2人になりかわり、それをいわば代弁するという格好だ。
伊東氏も、ドラッカーを語る上田惇生氏も、重要な論点を提示している。
まずケインズの伊東氏。
-では、ケインズはどんな失業対策を論じますか。 規制緩和がこんな事態を生んだと考えるでしょう。『派遣切り』された人や失業者に対し、生活保護に相当する額、例えば月12万円程度を渡したらどうですか。100万人で年に計約1兆5千億円。ばらまきの定額給付金をやめれば実現できます。月10万円の派遣労働なんかに行くな、と。そうして派遣をやめさせていきます。 |
上田氏。こうドラッカーを代弁している。
-もし、日本企業のトップから「ドラッカーさん、あなたの言うことはわかる。しかしこのままでは会社が立ちゆかない。それでも非正規労働者を抱えろというのですか」と問われたら? 寮から出さなければ今すぐ会社がつぶれてしまうほどなのですか、内部留保もないのですか、かつて日本企業の多くは再就職の世話をしていましたね。そう彼は答えるでしょう。……。 |
つまり、伊東氏も、上田氏も、先達2人ならこ考えるだろうということを、上のとおり語っているわけだ。
伊東氏が先の引用で語るのは、政府の派遣切りに対する実践的な支援政策の方向だし、上田氏は、企業にたいして内部留保を吐き出すことによって労働者の生活を重視する姿勢を強調しているのだ。伊東氏のコメントは、先の引用のあとで、不況時の社会保障政策の拡充に及んでいる。
伊東氏が主に、政府のなすべきこと、上田氏は企業のそれに言及しているのは企画をふまえれば想定できることだが、ケインズと、ドラッカーならばこう語るということを解説する二氏の話を今、総合することが重要だろう。
つまり、政府は、思い切って国民政策重視の財政政策をとれということ、そして企業は、貯め込んだ内部留保、つまり労働者の労働の結晶ともいえるものの一部を今こそ吐き出すことで、その責任を果たせというのは、この時期に多数が一致できる打開のための第一歩といえるのではなかろうか。
ケインジアンも、ドラッカー信奉者も、上田氏が語るように「社会を壊すようなことはするな、重要なのは人であり社会なのだから」という一点では一致しうるのだろうから。逆に、この一点を、もっとも粗末にしたといえるのが新自由主義だろうからである。現時点で、この点での一致は要となるものではないか。
特集のテーマが「資本主義はどこへ」にあるのなら、それにふさわしい、もっとも重要な人物の一人であるマルクスを欠いてはこの特集は画竜点睛を欠く。以後を期待したい。
マルクスならば、はたしてどう語るだろうか。
(「世相を拾う」09009)
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