コントラバスがソプラノ歌手に恋するお話、パトリック・ズュースキント『コントラバス』の逆バージョンというところでしょうか。
私はソプラノですから高音が得意なのですが、暖かくて柔らかいメゾやバス/バリトンといった低音好き。
その人たちが歌う歌曲などレッスンに持って行っては先生に「低過ぎ」「高い声は訓練で出るけど低い声は与えられたものだから」と、何度となく却下されたものでした。
そこで♪
コントラバスで低声を手に入れることに・・・。
それだけでなく、いつか楽器もやって会社のオケに入りたいと思っていたところ、「コントラバスで歌う」ことにこだわってレッスンをしてくださる某オケマンの先生に巡り合い、月2回お稽古をしていただいています。
1年が過ぎ・・・
ソロの発表会のお話をいただきましたが、まだ運指もままならない。歌もあるし、時間かけてゆっくりやろうと思っていたので迷いました。でも個人レッスンだけだと目指すレベルが見えにくいのは歌と同じ。またお稽古はシマンドルという教則本(声楽でいえばコンコーネとかコールユーブンゲンみたいなもの)しかやっていなかったので、曲を演奏して本番を経験しないと音楽になっていかないかなと出演を決めました。
さて、そうは言っても、歌のように半年もかければアリアでもなんとかそれなりに・・・とは行きません。だって、音を出す「鍵盤」も自分で作らなくちゃいけないわけだし、ポジション移動(音階定位置に指を持っていく)は至難のワザ。
私ができるポジションで演奏できる曲はかなり限られてしまうので、結局、まだやってないポジションの音もそれだけ覚えるということで、できるだけ音が少ないCacciniのAve Mariaに決定。
しかし。
音は少なくても、Ave Mariaのレガートにロングトーンは歌だって大変なわけで・・・。しかも、歌詞がほとんどないお祈りの歌で、歌でもこの曲を美しく演奏できる人はそういませんから(発声練習にしか聞こえない・・・みたいな)実は無謀だったと気づいたのは後の祭り。
曲をいただいたのが8月、歌の本番が9月10月と重なっていたし楽器は歌以上に練習がモノを言うから両立は予想以上に大変、2ヶ月で演奏曲を仕上げるのは歌でもギリギリ。なのでAve Mariaを1日2時間も練習するという、歌だったらありえない(でしょ?)練習量で奇跡を期待すべく本番に臨みました・・・・。
そんなわけで、ピアニストのT先生の素敵な伴奏に助けられながら、初心者らしいレベルの演奏の本番を無事終了。奇跡は起きたのか起きなかったのか・・・
まあ、こんなもんでしょう。急には上手くなりませんか、全く経験のない弦楽器を演奏できるようになったという喜びはひとしお。
これで、低音を手に入れる道ができたので、カルメンとかサム・デリとか、ソプラノには歌えない歌をコントラバスで歌います!
オケで演奏することが目的で、ソロなんて考えもしなかったのですが、同じ門下の皆さんはとても美しい演奏をする人ばかりで、私も少しでも近づきたいと思いました。
結局、楽器が何であれ歌うことが好きな私。「声」で高音を「コントラバス」で低音を歌います。
新しい歌に出会えたことに感謝!
同じ演奏でも歌と少しだけ違ったのは・・・
舞台に出たとき、楽器がそばにいるのがとても心強い感じがしたこと。歌では舞台に出ると自分がさらけ出されているようで、いつも逃げ出したくなるんです。
私はまだ自分の楽器は持っていないので、今回大事な分身を貸してくださたMさんには心から感謝です。
ホールから歩いてすぐ「港が見える丘公園」にお散歩。
岩崎博物館の中になる山手ゲーテ座はこじんまりとした素敵なホール。
わが師匠は新婚さん。門下生一同の合奏によるメンデルスゾーンの「結婚行進曲」をプレゼント。
これから始まるサプライズに全く気づかないでいる師匠ご夫妻・・・。
コントラバスがこれだけ揃うと迫力です。
最年少は写真左端の来年音大受験するという高校生のYちゃん。
本番ではシマンドルのエチュードをまるで楽曲のように美しく演奏していました。
私に楽器を貸してくださったMさんのリハーサル風景。
高音はこうやって下のほうを押さえるんです。
Mさんはオケ2箇所に入って、他の団体のエキストラなどでも大活躍してます。
私もまだまだ初心者の域。
ご一緒に精進して行きましょう。
では、また来年♪
私は初心者だから皆さんのほうが上手いのは当然なのですが、レベルとは別にK澤門下の皆さんの演奏は音楽がきれいなんです。同じ門下に入れていただきうれしく思います。私も少しでもMさんはじめ皆さんに追いつけるようお稽古を重ねていきたいと思いますので色々教えてくださいね!