セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「Love Letter」

2020-12-14 14:26:30 | 映画感想
 「Love Letter」(1995年、日本)
   監督 岩井俊二
   脚本 岩井俊二
   撮影 篠田 昇
   音楽 REMEDIOS
   出演 中山美穂
      豊川悦司
      酒井美紀
      柏原 崇
      笵 文雀  加賀まりこ
      篠原勝之

 山で遭難死した婚約者の法事、その実家で卒業アルバムを見せられた博子は、未だ忘れられないその人の当時の住所をメモし「お元気ですか」とアテもなしに手紙を出す、幾日かして死んだ筈の藤井樹(ふじい いつき)から返事が来た・・・。

   予告篇 https://www.youtube.com/watch?v=M0UA1yrUTfs

 まぁ、同じクラスに同姓同名の女子が居たという事なんだけど、この二人が文通を交わしていく内に同姓同名故に揶揄われた厭な思い出ばかりだと思ってた裏側に自分では気付かない恋心が育っていた事を知る、博子の思い出補完で始まった本格的文通が樹の知らずいた恋心を自覚させる事になり、それが「Love Letter」の意味と重なる。このナイーブな設定は中々面白くて良かったし、又、綺麗に撮ってもらってる中山美穂と酒井美紀の魅力が遺憾なく発揮されて魅せるものが有りました。

 只、博子が小樽を訪ねた際に二人はすれ違い博子だけが樹に気が付く、それは樹が自分にそっくりだったから。そこで博子に自分がもう一人の樹、つまり初恋の相手の代用品ではなかったのかという疑念に苛まれるのてすが、この葛藤に対する解決をウヤムヤにしてるのが凄く気になりました。
 それと博子って何をして生活してるのか、まるで生活感がない、亡き婚約者の山仲間からプロポーズされてる現状は高橋留美子氏の名作マンガ「めそん一刻」の響子さんと同じ状況なのですが、この人には葛藤はあれど誰にでも有る自我がまるで無い、岩井監督の経営する岩井牧場の柵の中で大人しく飼われている雌羊のよう。
 この監督さんの「リップヴァンウィンクルの花嫁」も観てるけど、あのヒロインも自我が無く流されてばかりでしたね、だけど、最後は自分の足で立って歩くまでに成長した、でも、この博子さんは最後まで流されるまんまに感じてイマイチ共感性が薄くなってしまいました。

 ピュアでメルヘンチックな良い作品だと思うけど、ヒロインの主体性の無さに「これ、どうなの?」と思った作品でもありました。

 R2.12..6
 DVD
コメント
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