セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「存在のない子供たち」

2019-08-04 21:24:32 | 外国映画
 「存在のない子供たち」(「CAPHARNAÜM」 、2018年、レバノン・仏)
   監督 ナディーン・ラバキー
   脚本 ナディーン・ラバキー  ジハード・ホジェイリ
      ミシェル・ケサルワニ  ジョルジュ・ハッパス
      ハーレド・ムザンナル
   撮影 クリストファー・アウン
   音楽 ハーレド・ムザンナル
   出演 ゼイン・アル・ラフィーア
      ヨルダノス・シフェラウ
      カウサル・アル・ハッタード
      ハーレド・カーメル・ユーセフ
      
   予告篇 https://www.youtube.com/watch?v=6TPeIoJ8yHc

 かつてアラブの真珠とも言われたレバノン ベイルート、1975年に始まった激しい内戦とイスラエルに隣接する国故、過激派の流入を誘いそれがイスラエルの更なる攻撃を呼ぶ、結果は大量の貧困、シリア難民の流入がそれに輪をかける。
 そんなベイルートの貧民窟で出生届も出して貰えなかった12歳(推定)のゼイン、彼の多くの弟妹もまた同じ。
 傷害の罪で服役中の彼は両親を告訴した、「生活も出来ないのに僕を産んだ罪で」

 連鎖する貧困のDNAという面で見れば、これはレバノン版「フロリダ・プロジェクト」、ドキュメンタリー・タッチのドラマという部分にも共通性がある。
 あの作品には少しも心を動かされなかったけど、この作品はズシンとくるものがありました、まるっきりシンパシーを感じられなかった「フロリダ・プロジェクト」の母子に比べ、この作品のゼインには充分シンパシーを寄せられる、そこが原因でしょう。エチオピアからの不法移民でヨチヨチ歩きの赤ん坊を抱え必死に生きてる母親ラヒルも、「フロリダ〜」の母親と較べれば雲泥の差がある、只、映画としてラヒルの結末の付け方に疑問は残りました、此処までシビアに描いてきたタッチにそぐわない。映画「羅生門」的といえば言えるけど、この作品ではトーンを変えない方が良かったと僕は思います、また、その方がゼインのラストの表情の意味に重みが出るんじゃないかな。

 「フロリダ・プロジェクト」が合わなかった僕には、些かダレる感無きにしも非ずだけど、扱ってる内容の重さはそれなりに受け止められたと思います。
 もう一度観たいかと問われればノンだけど、観ておくに値する作品だと思います。

※親も「存在しない大人」なんだろうね。
※役者さん達は、皆、役と似た境遇の素人?を使ってるが、下手な感じはまるでない。(「嵐電」の監督、素人使ったって違和感なく出来るんだよ)
※ラヒルも「フロリダ〜」の母親と同じことをしようと決心したんじゃないかな。(夫婦と子供で違法入国して共犯から逃れる為、別々で暮らし挙句、夫は助けにならず貧困に追い詰められて)
※今年は子役の当たり年、このまま行ったら主演男優がこの子で、主演女優が「バジュランギおじさんと〜」のあの子になってしまう。
※そろそろ軽い映画が観たい(笑)、現在、予定の2作品も重いし長い、暑いし息抜きしたいヨ。(まぁ、1本は暑い中で観てこその作品ですが(多分、通しなら3回目))

 R1.8.3
 シネスイッチ銀座
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