セピア色の映画手帳 改め キネマ歌日乗

映画の短い感想に歌を添えて  令和3年より

「スモーク」

2016-12-25 00:57:03 | 映画感想
 「スモーク」(「Smoke」、1995年、米・日・独)
   監督 ウェイン・ワン
   脚本・原作 ポール・オースター
   撮影 アダム・ホレンダー
   音楽 レイチェル・ポートマン
   出演 ウィリアム・ハート
       ハーヴェイ・カイテル
       ハロルド・ペリノー・ジュニア
       フォレスト・ウィテカー  ストッカード・チャニング

 NYブルックリンの街角にある煙草屋。
 そこの店主オーギーと彼に繋がる人達の人生模様をオムニバス風に描いて
いく。

 人が語る事は冒頭に示されるエリザベスⅠ世の煙の量計のように嘘か真か、
実に眉唾の類である。
 煙草の煙のように実態が見えるようで直ぐ無に帰してしまう。
 しかし、その掴み所のない真実らしきものを真実と思い、人間の善性を疑い
ながらも信じなければ生きていけない、弱くて強い、それこそが人間の正体で
はないのか。
 黒澤の「羅生門」の杣売りのように。

 観て感じたのは「羅生門」のバリエーション、もしくは発展型ではないかと。
 「真実は一つのようで、個人々々の問題でしかない」
 それはエピローグのオーギーと老婆の映像と、その始めにタイプライターで
印字される「「オーギーのクリスマス・ストーリー」とポールの名前」が語ってい
る気がします。
 真実と見るか物語と見るか?(その意味では後年の「ライフ・オブ・パイ」に
も似てる)
 オムニバス風に語られる話それぞれに結末は描かれていない、観客の想
像に任されていますが僕はそこに「羅生門」のラストと同じ人間の善性に対す
る「希望」が託されていると感じました。
 この物語で扇の要である杣売りの位置に居るのがオーギー、話を進行させ
る動力である多襄丸の位置がポール、そして疑念を提示する真砂と武士が
ラシードとルビー。
 そこにクリスマスに象徴される「赦し」の要素を入れた。
 人間の善性に希望を託すという意味ではF・キャプラの「素晴らしき哉、人生
!」、「ボケット一杯の幸福」にも通じてる。
 捻くれた考えで多分ピントずれしてるだろうけど、僕はそんな事を連想しまし
た。

 今の時期にピッタリな作品かもしれません。
 良い作品だと思います。

※葉巻は香りも味もめっちゃ強くて、喫煙者の感想としては魅力は凄くあるん
 ですよね。
 でも、あれを毎日吸ってたら還暦なんて無理だったろうな。(1本なんて1回
 では吸えないから鋏で途中で切り何回かに分けるのだけど、それでも肺に
 ダメージを感じる~それに葉巻ってガタイの大きい外人じゃないとサマにな
 らない)
 匂いもキツイから鈍感になってる僕さえ部屋から何日も匂いが取れないの
 が解ります。
※今年は「ブルックリン」、「ニューヨーク眺めのいい部屋売ります」、本作とブ
 ルックリンを舞台にした作品が何故か多かった。

 H28.12.23
 DVD

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  我、鏡を見て詠める

 安するめ 噛めば噛むほど 味はなし
コメント (4)
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