「授乳」
村田沙耶香 著
三編のどれも”わたし”の独自の世界観でおおわれている。
授乳の家庭教師とわたし、コイビトのぬいぐるみとわたし、
御伽の部屋の正男おねえちゃんとわたしと要二。
世界観は性と連結しており、多様のなかを泳ぎながら溺れる。
気付きは何をもたらすのか、そもそも気付きとはなんなのか。
わたしはわたしや、わたしとあなたのその意味。
あなたはあなたとして見てしまえば、それは途切れた夢想となり、
世界は一方通行で閉ざされていく。
世界に光はなくなり、深閑としただけの物語が存在する。
誰も語ることのないそれは土に帰るだけのものとなり、
世界は名だけとなっていく。
覚え書
言葉の意味は知れど文字をおうごとに訪れる光景、
景色、匂い、目視、耳触り、肌触りで起こる感情ごとは
少しだけの練習が必要となる。
周りの環境いかんで文字はすべってばかりいく。