日暮里の中村酒店で角打ちの雰囲気に浸ったのが2月のこと。それから約半年が経ち、わたしのライフワークである立ち飲みラリーは久々に再開された。
西日暮里駅から西に進む。目指すは谷中の谷中銀座だ。
実は7月の終わりに一度日暮里~西日暮里間を歩き、立ち飲み屋を探した。さんざんくまなく歩いたが、ついぞ立ち飲み屋を見つけることはできなかった。そして、この日、改めて西日暮里を訪ね、立ち飲みを探すことにしたのである。あとはもう谷中銀座に賭けるしかなかった。
ご存知のとおり、谷中は南北に長い。谷中墓地に行くには日暮里駅が最寄りだが、谷中銀座は西日暮里駅が近い。西日暮里駅を出て、大通りを西へ向かい、道灌山下の信号手前を左に折れれば、住所はもう谷中だ。一歩谷中に足を踏み入れると町の雰囲気は一変する。気分はもう「ちい散歩」だ。
谷中銀座までの道中、酒屋を見つけては中を覗いた。もしかすると、角打ちの立ち飲みコーナーがあるかと考えたからだ。
だが、いっこうに立ち飲み屋は見つからず、結局谷中銀座まで出てしまったのである。
谷中銀座は平日であるのにも関わらず賑わっていた。
ちょうど、夕刻に差し掛かる時分で奥様方の買い物の時間というのもあったが、観光客のような人も少なくなかった。
「ここで立ち飲み屋を発見できなかればアウトだ」と言い聞かせ、一歩谷中銀座に足を踏み入れると、早速すぐ左手に酒屋があり、その店頭にはビアサーバーが設置しているのが見えた。
「もう、見つかった」と思った。
店の中を覗くと、特段立ち飲みスペースを設けている風でもなく、普通の酒販店のようである。店頭のビアサーバーはただ生ビールを販売してくれるというだけのもので、つまみなどは置いていない。
これは、立ち飲みと言えるか。
しばし、逡巡してみて、もう少し通りの奥まで探してみることにした。
結局、「夕焼けだんだん」まで出て、階段を上るところまで行ってみたが、立ち飲み屋を見つけることはできなかった。
「夕焼けだんだん」からは暮れなずむ町が一望できた。
さぁ、戻ってあの酒屋で生ビールを飲むとしようか。
立ち飲み屋ではないが、外で生ビールを飲めるのも、立ち飲みであることに変わりはない。
そう思ってもと来た道を引き返した。
酒屋さんは「越後屋本店」といった。
店頭に着き、ビアサーバーの前で待っていると、やがて店のおばちゃんが現れ、「1杯ください」というと「350円ね」と愛想よく返ってきた。
そうして、慣れたてつきでプラスチックのコップになみなみと黄金色の麦汁をそそいでくれた。
ビールは「エビス」。普段は土日だけ「エビス」で平日は「スーパードライ」を出すそうだが、この日は何かの事情で「エビス」になったという。
プラスチックのコップはおおぶりのものでたっぷり350mlは入るだろう。しかも「エビス」でこの値段はかなり得した気分だ。
おばちゃんがビールを注いでいると、何かいい匂いが鼻につく。その匂いの方向に目を向けると、隣の店舗「肉のサトー」でお兄さんがコロッケを揚げている。
「これはいい」。
ビールを受け取って、すぐに隣の店舗へ。
お兄さんに、「ウインナーフライ(80円)と谷中コロッケ(70円)を頼んだ。
注文を貰ったお兄さん、早速油にコロッケをなどを入れて揚げ始めた。
揚げる時間がやけに長く感じる。
うむむ、早くこの冷たいビールを口に運びたい!そんな衝動に駆られてしまう。
「はい!揚がった!」
コロッケは白い紙袋に入れられ、わたしはひったくるように受け取った。そして、店先に置いてある、ソースをかけて一人悦にいった。
ソースはブルドック。
余談だが、ちょうどこの日、ブルドックは司法の場において米国のファンド会社のTOBを振り切っている。
さて、どこで飲もうか。
わたしが飲む場所を探していると、越後屋本店の脇にちょっとした椅子があり、そこで2、3人の男女がプラスチック製のコップを手に持ちながら談笑している。椅子はまだ空いていたが、それでは座り飲みになってしまう。
わたしは、ビアサーバーの横で堰をきったようにプラスチックコップを傾けて、麦汁を流し込んだのであった。
そのビールのまたうまいことうまいこと。
そして、揚げたての「ウインナーフライ」にかぶりついたのである。
これもまた、たまらないおいしさであった。
辺りは黄昏から少しずつ群青が訪れようとしている。
昼間の暑さはすでになく、心地よい風が汗をかいた体を優しくなぶっていく。
それはまるで絹のような滑らかさで。
2日後に訪れる盆の入りを直前にして、谷中銀座は日常の只中にあった。
気がつけば、ビールが空になっている。
わたしは、またもやビアサーバーの前に立ち、「もう一杯」とおばちゃんに声をかけた。
おばちゃん、またもやサーバーに手をかけ、実に見事な手つきでビールを注ぐ。
すると、途中でタンクが空になってしまった。
おばちゃんは、「ごめんね」と言ってタンクを取替え始めた。
5分後、タンクからまた新鮮な麦汁がほとばしりはじめた。
「はいね」とおばちゃん、わたしに2つのコップを渡してくれた。ひとつはなみなみに入ったエビスビール。そして、もうひとつがコップに3分の1ほど入ったエビス生。中途半端な方のビールは途中でタンクが空になったものだ。
おばちゃんに丁重にお礼を言って、それも頂くことにした。
時代劇ドラマに出てくる「越後屋」は「そちもワルよのう」と相場は決まっているが、こちらの越後屋さんはなんていい人なのか。
やはり、下町の商店街は人情に厚い。
同店が、つまみ類などを生ビールと一緒に売らないのは、近隣のお店との付き合いを重んじているからであろう。
たまには、こんな立ち飲みもいい。
西日暮里駅から西に進む。目指すは谷中の谷中銀座だ。
実は7月の終わりに一度日暮里~西日暮里間を歩き、立ち飲み屋を探した。さんざんくまなく歩いたが、ついぞ立ち飲み屋を見つけることはできなかった。そして、この日、改めて西日暮里を訪ね、立ち飲みを探すことにしたのである。あとはもう谷中銀座に賭けるしかなかった。
ご存知のとおり、谷中は南北に長い。谷中墓地に行くには日暮里駅が最寄りだが、谷中銀座は西日暮里駅が近い。西日暮里駅を出て、大通りを西へ向かい、道灌山下の信号手前を左に折れれば、住所はもう谷中だ。一歩谷中に足を踏み入れると町の雰囲気は一変する。気分はもう「ちい散歩」だ。
谷中銀座までの道中、酒屋を見つけては中を覗いた。もしかすると、角打ちの立ち飲みコーナーがあるかと考えたからだ。
だが、いっこうに立ち飲み屋は見つからず、結局谷中銀座まで出てしまったのである。
谷中銀座は平日であるのにも関わらず賑わっていた。
ちょうど、夕刻に差し掛かる時分で奥様方の買い物の時間というのもあったが、観光客のような人も少なくなかった。
「ここで立ち飲み屋を発見できなかればアウトだ」と言い聞かせ、一歩谷中銀座に足を踏み入れると、早速すぐ左手に酒屋があり、その店頭にはビアサーバーが設置しているのが見えた。
「もう、見つかった」と思った。
店の中を覗くと、特段立ち飲みスペースを設けている風でもなく、普通の酒販店のようである。店頭のビアサーバーはただ生ビールを販売してくれるというだけのもので、つまみなどは置いていない。
これは、立ち飲みと言えるか。
しばし、逡巡してみて、もう少し通りの奥まで探してみることにした。
結局、「夕焼けだんだん」まで出て、階段を上るところまで行ってみたが、立ち飲み屋を見つけることはできなかった。
「夕焼けだんだん」からは暮れなずむ町が一望できた。
さぁ、戻ってあの酒屋で生ビールを飲むとしようか。
立ち飲み屋ではないが、外で生ビールを飲めるのも、立ち飲みであることに変わりはない。
そう思ってもと来た道を引き返した。
酒屋さんは「越後屋本店」といった。
店頭に着き、ビアサーバーの前で待っていると、やがて店のおばちゃんが現れ、「1杯ください」というと「350円ね」と愛想よく返ってきた。
そうして、慣れたてつきでプラスチックのコップになみなみと黄金色の麦汁をそそいでくれた。
ビールは「エビス」。普段は土日だけ「エビス」で平日は「スーパードライ」を出すそうだが、この日は何かの事情で「エビス」になったという。
プラスチックのコップはおおぶりのものでたっぷり350mlは入るだろう。しかも「エビス」でこの値段はかなり得した気分だ。
おばちゃんがビールを注いでいると、何かいい匂いが鼻につく。その匂いの方向に目を向けると、隣の店舗「肉のサトー」でお兄さんがコロッケを揚げている。
「これはいい」。
ビールを受け取って、すぐに隣の店舗へ。
お兄さんに、「ウインナーフライ(80円)と谷中コロッケ(70円)を頼んだ。
注文を貰ったお兄さん、早速油にコロッケをなどを入れて揚げ始めた。
揚げる時間がやけに長く感じる。
うむむ、早くこの冷たいビールを口に運びたい!そんな衝動に駆られてしまう。
「はい!揚がった!」
コロッケは白い紙袋に入れられ、わたしはひったくるように受け取った。そして、店先に置いてある、ソースをかけて一人悦にいった。
ソースはブルドック。
余談だが、ちょうどこの日、ブルドックは司法の場において米国のファンド会社のTOBを振り切っている。
さて、どこで飲もうか。
わたしが飲む場所を探していると、越後屋本店の脇にちょっとした椅子があり、そこで2、3人の男女がプラスチック製のコップを手に持ちながら談笑している。椅子はまだ空いていたが、それでは座り飲みになってしまう。
わたしは、ビアサーバーの横で堰をきったようにプラスチックコップを傾けて、麦汁を流し込んだのであった。
そのビールのまたうまいことうまいこと。
そして、揚げたての「ウインナーフライ」にかぶりついたのである。
これもまた、たまらないおいしさであった。
辺りは黄昏から少しずつ群青が訪れようとしている。
昼間の暑さはすでになく、心地よい風が汗をかいた体を優しくなぶっていく。
それはまるで絹のような滑らかさで。
2日後に訪れる盆の入りを直前にして、谷中銀座は日常の只中にあった。
気がつけば、ビールが空になっている。
わたしは、またもやビアサーバーの前に立ち、「もう一杯」とおばちゃんに声をかけた。
おばちゃん、またもやサーバーに手をかけ、実に見事な手つきでビールを注ぐ。
すると、途中でタンクが空になってしまった。
おばちゃんは、「ごめんね」と言ってタンクを取替え始めた。
5分後、タンクからまた新鮮な麦汁がほとばしりはじめた。
「はいね」とおばちゃん、わたしに2つのコップを渡してくれた。ひとつはなみなみに入ったエビスビール。そして、もうひとつがコップに3分の1ほど入ったエビス生。中途半端な方のビールは途中でタンクが空になったものだ。
おばちゃんに丁重にお礼を言って、それも頂くことにした。
時代劇ドラマに出てくる「越後屋」は「そちもワルよのう」と相場は決まっているが、こちらの越後屋さんはなんていい人なのか。
やはり、下町の商店街は人情に厚い。
同店が、つまみ類などを生ビールと一緒に売らないのは、近隣のお店との付き合いを重んじているからであろう。
たまには、こんな立ち飲みもいい。
確かに夕焼けだんだんを登った左手に酒屋さんがありました。一応、中を覗いてみましたが、それらしきものがなかったので、とうとう引き返した次第です。
しかし、ガラス戸の倉庫で飲めるとは?
それは、オフィシャルなもので?
それとも、親しい人だけが許される場ですか?
しかい、缶詰とシャンパン。
それは是非体験してみたい。
夕やけだんだん上の左にある酒屋さん、
正面左が店舗そして右にガラス戸の倉庫があるが
ここで飲めます、
近頃は活気が無く(お年寄りがみな他界なさったので)
やってないこともありますが、
店からシャンパンを持ち込んで、
缶詰を食べながらシャンパンのコップ酒
(コップと箸は出してくれる)をよくしました。
夏目漱石、森鴎外の作品を読むと、台東区、文京区の町並みが出てきますね。
そうそう、この夏、幸田露伴の「五重塔」を買いました。実はまだ読んでいませんが、昭和30年代に全焼した谷中の五重塔が出てくるようです。
一度、谷中の墓地に行って、その跡地を見ましたが、「なんか、すごいことがここで起こった」ような気がして不思議なきもちになりました。
谷中散歩はかなり奥が深いと思いますね。
(鰻と日本酒のお店)
一度は昼から鰻酒をやって、ほろよいで谷中を練り歩いてみたいです♪
けっこう、面白かったですね。
北砂やわが町王子ともまた違った趣のある、味わい深い町ですね。
ところで、akainuさんのブログが最近更新されていません。
また、どっかの会社に缶詰になっているのでしょうか。
それとも、飲み歩いているのでしょうか。
のんびりできそでイイ感じだった。
でももうお外でビール飲むのにはサムイ季節になっちゃったねぇ。。。
立ち飲みの奥義を。
究極は自販機の前で飲むか、普通の居酒屋だけど、席にはつかず、廊下で立って注文するか、だな。
写真に写ってるおばちゃんが、下町っぽくて泣かせるでしょ。
テンプレートはいろいろ試したけれど、やっぱこれが一番いいかなと思ってるよ。
師のFC2はテンプレートっていっぱい種類あるの?
しかし、このような商店の店先で一杯やる師は、もう完全な「立ち飲みプロ」だな。(笑)
そういえばあっという間にテンプレートが元に戻ってるけどどうしたの?