黄昏ゆくラジャスターンの山々を見ていたら、急激にお腹が減ってきた。そういえば、朝から何も食べてなかった。
食堂を探しに、わたし外に出た。実は宿を探しているとき、何軒かの食堂があることに気付いた。そのうちの一軒に向かって歩いた。城壁の門を出たところにある食堂である。比較的、大きな食堂で、ツーリストの姿は見えない。それは、わたしにとって都合がよかった。何故ならば、そういう店は、ものの値段が全てツーリスト価格になっているし、そもそも店員はすれた奴が多かった。食堂に入って、いつものように「ターリー」の値段を聞いた。店のオヤジは、「10ルピー」だという。「7ルピーにしてくれないか」というと、彼は「NO」と言った。想定内である。「じゃ、8ルピーにしてくれないか」と改めて頼むと、彼はあっさりと頷いた。最悪、10ルピーでもいいかなと思っていただけに、少し嬉しい気持ちになった。
「ターリー」は、予想以上においしかった。わたしは、チャパティを3枚お代わりして店を出た。飯がうまければ、生きていける。どうやら、この街でも、なんとかやっていけそうだった。
食堂を出て、散歩しながら帰ろうかと思っていると、食堂の脇にビールが売られていた。冷蔵庫に入れられている訳ではなく、ましてや氷水に浸けられている訳でもない。透明なボトルビールが無造作に置かれている。
「お、ビールか」。
わたしが、足を止めたのは、インドで初めてビールを見たからである。インドに入国して約2週間、一度もビールを見かけなかったのだ。しかも、よくよく見ると、値札が貼られている。ビールを見るのも初めてならば、値付けされている商品も見るのは初めてだった。
「39ルピーか」。
ため息と一緒に口の中で反芻した。
日本円にすると僅か約120円。日本の大瓶より大きなボトルは断然安い。だが、ここインドの物価を考えれば、決して安くない。そもそも、ゲストハウスの宿泊費とほぼ同額ではないか。
「諦めて帰るとするか」。
そう思って歩き始め、食堂の角を曲がると、香ばしい香りとともに揚げ物のスナックを焼いている屋台が目に飛び込んできた。なんという食べものだろう。見た目はまさにコロッケである。しかも、それを買う人の列ができており、人気のようだ。急にわたしは、ビールと一緒にそれを食べたくなった。
揚げ物屋のお兄さんに、「いくら?」と聞くと、「一つ1ルピーだ」という。案外安いじゃないか。それを聞いて、わたしはビールを買う決心をしてしまった。
いい町に辿り着いた、お祝いをしよう。今日くらいいいじゃないか。
スナックを2個とボトルビールを買って、わたしは宿に帰った。屋上に出て、ヴィクトリノックスのオープナーで栓を開け、わたしはひとりで乾杯した。
あぁ、うまい。
バンコク以来、約2週間ぶりのビールだった。しかし、ビールは全く冷えてなく、常温であることを除けば、最高のビールだった。
揚げ物のスナックは思っていたとおり、コロッケそのもので、まさにビールとの相性は抜群だった。アールーティッキ。その揚げ物の名前を後で知った。
屋上からの景色は、少しずつ淡い濃紺の闇に包まれつつあった。ジャイプルより、暑さはましだったが、それでも4月下旬のインドは暑い。向かいの建物の一階を見下ろすと、その家はちょうど夕げの時間だった。10人以上の大家族である。暑さをしのぐために、三和土に直に座り、談笑しながら、ご飯を食べている。それをただ眺めているだけで、こっちまで、和やかな気持ちになってくる。
久しぶりのアルコールのせいか、それともインドのビールが強いせいか、わたしはだいぶ酔ってきた。ずいぶん、いい心持ちになってしまったようだ。
冷えたビールにありついたのは1,2回程度だよ。ほとんどが常温で、実際はカンカン照りの外に出されて、あったかいビールだったなぁ。
タンドリーとビールは抜群に合うね~。
この時のインドでの俺は、何故かストイックモードに入ってて、食事も肉を控えてほぼベジだったし、炭酸清涼飲料などもあまり飲まず、また、飲酒もほとんどしなかった。
そのせいかすげー痩せたなあ。(苦笑)
なお、バフステーキ屋では散財した。(笑)旅も終わりだったし、誘われていったし、久々の肉で気合も入ってたから、まあいいかって感じで・・・。
二度目になるパラの大会でのインドで飲んだのは、綺麗に冷えてる奴だったなあ。味も普通にそこそこうまいビールだったし。この時はほぼ毎日のように飲んでたなあ。タンドリーチキンと最高にあったね。
銘柄は忘れたけど、キングフィッシャーではなかった。一緒にいたインド人は、キングフィッシャーは美味くないって言ってたよ。
世界のビールが日本でも酒専門店で買って飲める今、インドのものをほとんど見ないのは、輸入して高くなってまで飲むほどは美味くないからなのかもしれないねえ。
ちなみに、自分の飲んだインドのビールはほとんど常温だったよ。常温といっても、カンカン照りの外にほかされてた奴だから、ぬる燗て感じだった。
でも、うまかったなぁ。
師は2回しかビール飲まなかったのか。
カルカッタのステーキ屋って、宿の近くのバフステーキ屋?あそこでビール飲んだら、だいぶ高くつくんじゃないの?
日本ではメジャーなキングフィッシャーは、インドではあまり見かけなかった。
インドに入国して、3周間足らず、ビールを飲まなかったというのは、自分としては奇跡だと思う。
美味くないウイスキーくささで発泡しているという、なんともどうしようもないビールだったよ。
二度目に飲んだのは、パラの大会でダラムシャーラーの近くに行った時。この時のビールは普通に美味かったけど、かなり時間が経ってインドのビールがましになったことと、インド人が言ってたけど、銘柄によって全然味が違うからという理由だったんだと思う。
揚げ物とビール、最高だね。