近くて遠い箱根。小田急で行ったらすぐなんだけど。通算で何回行っただろうか。
泊まりなら4回くらい。49歳で5回目なら、そんなに多くもない。日帰りを入れたら8回目。そのうち1回は仕事で来た。
箱根に来ると必ず蕎麦をいただく。箱根って、やっぱり蕎麦なんだろうか。箱根湯本の駅前には、たくさんの蕎麦屋が軒を連ねる。まさに混淆玉石。中には、本当に酷い店もあった。立地に胡座をかいて値段が高いだけの店なんかも。だから観光地で立地のいい店はあまり信じない。大抵失敗するから。でも、駅出口から徒歩数分にある、「十六夜」は悪い店ではなかった。和菓子屋のビルの3階にある、本格的なお蕎麦屋さん。入口手前に旧い箪笥やらが飾られて、何やらもう只者ではない雰囲気が立ち込める。階段の階下にまで並ぶ長蛇の列。混雑しているのである。しかし、行列が出来るから、うまいとは限らない。こと、観光地では。
30分並んでようやく店内に。
あぁ、何なのか。まるでファンタジーの世界に紛れ込んでしまったかのようなインテリア。いや、何かの舞台装置みたいじゃないか。これと蕎麦と一体どう関係性があるというのか。
席について、「もり」をオーダー。
その「もり」は、極細の、透き通るような蕎麦が美しく盛られて現れた。あぁ、やはり玄人受けする蕎麦屋さんなのだ。自分のような、駅そばを巡るような輩が入る店ではないのだ。
どれどれ、蕎麦猪口を持ち、はじめの蕎麦を手繰る。チョンと蕎麦の先端だけ、つゆにつけ、すぐさまズズっとすする。蕎麦の香りが口に広がった。それは、駅そばばかり食べている輩だからこそ理解できる本物の香りだった。
うまいよ。完全に。
これが蕎麦というものか。蕎麦つゆがなくてもうまい。
気がつけば、あっという間に蕎麦を手繰ってしまった。無心にただ一途に。
食後にデザートが出てきた。多分、一階にある和菓子屋さんの温泉饅頭。これもこれでしっかりうまい。
まるで迷宮に迷い込んでしまったかのような非日常な空間。蕎麦の醍醐味を存分に味わせてくれる。観光地には珍しい、キラ星のようなお蕎麦屋さんだ。
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