「BBB」

BASEBALL馬鹿 BLOG

居酒屋さすらい 0646 - 女将さんの愛に包まれた満ち足りた幸せ感 - 「江戸っ子」(葛飾区立石)

2013-05-27 09:33:28 | 居酒屋さすらい ◆東京都内
店がカウンターなのか、カウンターが店なのか、もう分からない。
背後のガラス戸すれすれに設けられたカウンターは、思ったよりも快適だった。意外と席に余裕があるからだ。立石の三大聖地「ミツワ」は密度が高く、可動域が極めて狭い。だが、「江戸っ子」のそれは、まだかなり動ける印象がある。少なくとも、広島市民球場の外野自由席よりはまだまだ余裕だ。

まだ、5時前にもかかわらず、カウンターは全て満席となった。ちょうど、我々が座った席で。
カウンターの向こうからは「ボール」という掛け声がやまない。言わずもがな、「ハイボール」のことである。酒場のキャパシティは60名といったところだろうか。女子率2%。常連率80%。その60名の注文がひっきりなしに飛び交う。

下町と呼ぶに相応しいのは、やはり京成線沿線であろう。京成には失礼だが、田舎路線であるからこそ、地価の上昇もせず、ほぼ完璧な形で戦後の風景が残っているのではないだろうか。特に押上から青砥までのこの沿線は。
建物もそして文化も。それに引き寄せられるように、多くの者が、この地を目指していくのも無理からぬことである。

着席した我々も「ハイボール」と「煮こみ」を頼んだ。ここに来たら、もうこれしかない。下町のハイボール。ミッドタウンやアップタウンのハイボールよりもやや琥珀が薄いが、断然もっぱら串焼きにはあう。この微妙な琥珀が下町だけのシークレットであり、そして特権だ。店によって、微妙に違う、この琥珀。それを楽しむのも、京成沿線の居酒屋巡りの楽しさともいえる。

「煮こみ」の味は最高だった。
何十年と重ねた歴史の産物。客の要望に研ぎ澄まされてきたその味はまさに下町仕様。大きな豆腐に葱が映える。味わい深いスープは様々な味噌を使っているような奥深さを感じる。

ここに来たら、もつ焼きだ。
一皿に4本という大所帯ながら、価格は280円。つまり、1本あたり70円というリーズナブルさだ。もちろん、同じものばかり頼んでいては飽きてしまう。したがって、組み合わせて注文するのだが、これには暗黙のルールがあるらしい。カシラとハツという組み合わせはOKのようだが、レバー、つくねは混合できない。「酔わせて下町」の藤原氏によると、「焼き時間の調整上の問題」らしい。
ともあれ、我々は一通りのもつ焼きを頼んでみた。
これが、本当に素晴らしい。身が大きいのである。この値段を考慮すると、本当に毎日来たいものである。

しかし、なんといっても、「江戸っ子」の「江戸っ子」たるゆえんは、やはり名物女将の存在だ。元祖3等身。厨房にあって、その存在は際立っている。どうやら膝を悪くしていらっしゃるらしく、椅子に座っている機会が多かったが、わたしが「ハイボール」のおかわりを求めたところ、直々に対応していただいた。素直に嬉しい。
0次会の店からここに来ると、店の温かさが際立つ。そう。そうなのだ。
店の温かさなのである。それは居心地といってもいい。
家のように温かく、女将さんが、まるでお母さんのようで、安心して楽しくお酒が飲めるという満ち足りた幸せ感。

女将さんは、常連のお客に「今日はもうお酒はおしまいね」と少し叱るような口調で言う。話しを聞いていると、このお客さんはどうやら、体調が優れないようだ。その体調を慮り、「もうおしまいね」と言っているのだ。
商売ではないのが素晴らしい。
杯を空けると、間髪入れずに「お飲み物はいかがですか?」と聞いてくるチェーン店とは違う。一体商売とは何なのだと思わずにはいられない。

トイレは案の定、店のはなく、この辺り一体の共同トイレを使用した。「ミツワ」も同じだし、そして「宇ち多”」もやはりそう。浅草、銀座線の地下街も鍵を借りて共同のトイレに行く。この雰囲気は堪らない。ひとつのコミュニティに自分が身を置いている気がする。

学問上、コミュニティの定義は難しいとされる。一般的には,組織全体の目的が定まらない集団をコミュニティとは言わない。だが、立石の大衆居酒屋に集まる人たちはコミュニティと言えるのではないだろうか。

「江戸っ子」は読書禁止である。そんな禁止条項を作る居酒屋も珍しいが、知らない人ともすぐに仲良くなれるそんな場であるからこそ、読書の必要はいらないし、ましてやケータイをいじる必要もない。
だから、なんだろう。
コミュニティという心の繋がりを感じ、安心感すら与えてくれるのだ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 居酒屋さすらい 0645 - 無礼... | トップ | ' »

コメントを投稿