曇り空の岐阜駅前。
人影は少なく、ここに来ると、いつも寂しい気持ちがするのは何故だろう。
仕事を終わらせて、名鉄岐阜駅まで戻ってくると、気持ちは空模様とほとんど同じだった。
時刻は16時ちょっと前、曇った心は酒で洗い流せるとは思っていないが、少なくともちょっとの間は忘れることができる。
「水谷」に行けば、店はもう開いているだろう。
だが、ボクは金華橋通りを歩きながら、店を物色した。
微妙に開いている店があった。
「花串軒」と書いてある。「はなぐしけん?」、いや「鼻具志堅?」などと馬鹿な連想をしてみる。
お店は開いているようにも見えるが、準備中にも見える。お客は誰もいないのだ。
「やってますか?」と外から声をかけると、「えぇ」と曖昧な返事が中から聞こえてきた。
多分、やっていないのだけれど、一人の客みたいだから、仕込み中でも捌けるだろうと踏んだのかもしれない。
ボクはカウンターに腰かけた。
昼ごはんを食べていなかったから、お腹がペコペコだった。
生ビール(390円)をもらい、あれこれつまみを物色した。メニューは豊富だった。
主たる酒肴に串揚げがあり、100円から。小鉢と称されるバルでいえば、タパス的な酒肴が280円からと書いてある。
そのいずれにも、岐阜の地名が書かれており、ご当地メニューにちなんだ」ことが想像される。
「おすすめのものありますか?」
店の主人に聞いた。
店の主人は間髪入れずに「けいちゃん焼き」はいかがですか?と答えた。
「けいちゃん焼き?」
真っ先に浮かんだのは「けいちゃん」と呼ばれる人のこと。小学校から、高校まで一緒だった悪友に「けいちゃん」という奴がいたからだ。
ボクがいぶかしそうにしていると主人は、「郡上の郷土料理です」という。
郡上といえば、郡上踊りで有名な、あの郡上か。なるほど、それは面白そうだ。
これは後から知ったのだが、けいちゃんのけいとは「鶏」を示しているらしい。キャベツや玉ねぎなどとともにみそ味仕立てで焼くらしい。
そいえば、名古屋には「とんちゃん」という豚肉の料理がある。肉料理を由来にする材料の名前をもじるのは、この辺りの慣わしなのかもしれない。
その「けいちゃん焼き」はすこぶる美味だった。
みそ味仕立てが、これまた名古屋と岐阜を物語っている。味噌は甘目。八丁味噌かどうかは分からなかったが、関東のみそ料理とは異なる味わいだ。
周囲に客が一人もいないので、ガツガツと食べてしまった。
ビールはスーパードライだった。
2杯目は何にしようかと考えながら、結局「ハイボール」(390円)にした。
サントリーの提灯があったから、中身は白角なのだろう。
串焼きの店にサントリーあり、などといわれるほど、その相性はいい。
そこで、ボクはつまみに「ぎふ 串カツ」、「ぎふ 土手焼き」(各100円)を頼む。
ともに、みそベースの酒肴である。
この両者は正直なところ、感動はなかった。
直接的な味噌の摂取という日常がないからであろう。そして、味噌がやはり甘いのである。
結局、ハイボールを2杯飲んで店を後にした。
聞くところによると、同店は岐阜市内で人気を誇るチェーン店らしい。
ちょっと強面の主人は、今もお元気に働いているかしら?
岐阜の郷土料理を集めた同店に大きなエールを送りたい。
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