古巣の同僚T根に連絡し、久しぶりに飲むことになった。
「サッカーW杯の感想も話したいし」。
そうか、古巣でサッカーの話題で盛り上がれる奴はもういないか。といっても、自分だって、経験者じゃないから、そんなに語れないけれど。
赤羽で約束したら、その翌日、T根と飲む同じ日に赤羽で仕事の打ち合わせが入った。電車賃を経費で落とせるじゃないか。
ただ、打ち合わせが終わって少しインターバルが空いた。まぁ、喫茶店で時間を潰せばいい話しで、赤羽にはレトロな喫茶店も数多い。
では、駅前にある「梅の木」へ行こうか。渋い店名だ。およそ、喫茶店とは思えない名称。向かう先はもちろん本店だ。場所はへべれけ側のバスターミナルが終わった角の一等地。ここは昔、梅林だったのか。
創業1945年て、終戦の年じゃないか。一番街は恐らく闇市だったと思うのだが、この「梅の木」あたりも恐らく同じような状況だったか。以来、78年、すっかり赤羽を代表する喫茶店になった。ちなみに新館は駅ビルに隣接した店舗である。ただ、雰囲気とともに味わうのなら、断然本店だ。変わった形の店内がもう既にレトロでもたる。
一階の席に座って、さてどうするか。コーヒーでも良かったが、この時間は胃が重たくなる。それはすなわち、酒の飲みに直結する大問題に発展するから、ここはもうあれしかないと、メニューを探してみると、やっぱりあったレトロスペシャル。
「クリームソーダ」(660円)。
これがある店はまさしく喫茶店だ。カフェなんていうやわなもんじゃないよ。
するとまるで、パリコレのランウェイを歩く清廉な美人のように現れたのが「クリームソーダ」だった。店内の薄ぼんやりとした灯りに照らされたその色がまた何と素晴らしいことか。まるで赤羽の街に溶けていきそうなグリーンであり、その上に浮かぶさくらんぼの赤がビルの電灯とコーデしている。
なんだか、飲んでしまうのをためらってしまうくらい美しい。こうして、まずは目で楽しむことができるのが、「クリームソーダ」のいいところなのだ。
黄金比的な流線型のグラスに注がれたネオンライトのようなメロンソーダとフローティングなバニラアイス、そして真っ赤なチェリーというビジュアル。これって喫茶店界のクイーンじゃないかしら。そのグラスから微かに聞こえる、プチプチという炭酸のノイズ。
最高だよ。
美しかったグリーンもバニラアイスと混じり合うことで、少しずつ輝きをなくしていく。エメラルドから翡翠のように、でもその魅力は失われることはない。
しかし、この飲み物、一体誰が考え出したというのか。
喫茶店の宝石、「クリームソーダ」は偉大だ。
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