三十路の食卓

食事の記録・食にまつわるあれやこれや
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甘味と、願いを

2011-04-23 01:07:02 | 食とレビュー
<4月14日の食事>
朝:フルーツグラノーラ+ヨーグルト コーヒー
昼:菜の花とサーモンのキッシュ ニース風サラダ(以上2点、DEAN&DELUCAで購入)無調製豆乳
夜:お弁当(玄米ご飯、豚の塩麹漬け焼き、キンピラゴボウ、ブロッコリーのカッテージチーズ和え、したらばサラダ)

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読んだ、といえば、先月のはじめ頃、酒井順子さんの「甘党ぶらぶら地図」を読んだのだった。

47都道府県を甘味を求めて巡った紀行文である。
酒井さんのエッセイは普段からよく読むが、やわらかな文体の中にも鋭い洞察力が伺える通常のものと比べて、好きなものを愛でる視線に満ちた紀行文は、文章の美しさがよく分かりやすいなと思う。

さて、その紀行。
各地の伝統的なお菓子縛りで巡っているため、和菓子を中心に食べておられる。
どちらかといえば間違いなく洋菓子の方が好きな私でも生唾が溜まって仕方なかったのだから、和菓子好きにはさもありなんというところだろう。

尚、我が栃木県にて酒井さんが召し上がったのは、「冬に食べる」日光の水羊羹。
練り羊羹に比べて日持ちしない水羊羹だから、傷みにくい冬に作られたのが始まりらしい。
水羊羹が名物なのも、そのいわれも、恥ずかしながら存じませんでした…。
そういった、地元の者でも知らないような隠れた名品って、沢山あるんだろうなあ。

このエッセイが最初に掲載されたのが2001年、単行本として刊行されたのが2007年で、文庫本が出たのが去年の7月。
事実を伝えるエッセイにはつきものの、仕方ない話ではあるが、その間にも変化は起きる。
甘味の作り手がご高齢で、掲載後にお店をしまわれたり、亡くなられたり。
名人の息遣いが伝わるような生き生きした文章だからこそ、その悲しみや儚さが余計に感じられる。
描かれた世界を、刹那なものとして、とても愛しく思える。

そして3月に、世界は変わったのであった。
初めて読んだ時には、読み方が変わるなんて思わなかった。

酒井さんが東北新幹線で出会った、東京に進学が決まった高校生。
彼は今ごろ、二十代半ばかそれ以降といったところだろうか。
地元への愛情が強い青年だったけど、東京の大学を出た後、そのまま東京で仕事を見つけたのかな。
それともやっぱり帰ったのかな。

私にとっては見た目も声も名前も知らない青年な訳だが、酒井さんの文章に彩られ、とても身近に感じてしまったのである。
どうか悲しみに押しつぶされていませんように。
そんな事を願ってやまない2011年4月の夜である。


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