小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

植松聖とナマポ

2017年08月07日 | エッセイ・コラム

 

まず最初に、生活保護を受けている方がこの記事を読み、不愉快な感じをお持ちになるかもしれません。決して不快にさせる意図はないことを予めお断りしておきます。

久しぶりに内田樹のブログをのぞいていたら、「愛国的リバタリアンという怪物」というタイトルの興味深い記事が載っていた。相模原「やまゆり園事件」の犯人、植松聖は生活保護の受給者だったという報道を受けて、それがトランプの「弱者は切り捨てろ!」の思想と、さらにアメリカのリベラリズムの源流とも関わり合うという興味深いエッセイであった。(http://blog.tatsuru.com/2017/08/02_0845.html

内田樹の「愛国的リバタリアン」なる呼称は、「気前のいいケチ」ほどの形容矛盾の言葉であり、それ自体の面白さと、なんで植松?という興味を喚起する。

植松聖は、重度の身障者は社会のお荷物だからという理由で、19人を殺人(彼の言では排除,抹消)したのだが、自分はなんと国から生活保護費をちゃっかりもらっていて、本人が自分でいうところの「社会のお荷物」だったというオチがついたわけだ。「社会のお荷物」が、「社会の厄介もの」を排除したという理屈が、形容矛盾の「愛国的リバタリアン」という名称になったということ。

植松に賛同して、生来の障碍者のみならず「社会的弱者は無価値ゆえに排除せよ」という偏見・差別主義者が、事件以降に数多く出現した。彼らは主としてネトウヨと呼ばれているらしいが、今回の報道をうけて、彼らにとっては「悲報」なのだろう。植松聖を英雄扱いから一転し、詐欺師・非道者的な扱いで酷評する記事が多く見受けられる。恥を知らないとはこのことかもしれない。


と、ここまで書いて待てよと、しばし事件後の自分なりに調べた情報を反芻し、ある記事を思い出した。

「創」という雑誌の編集者が取材した去年のネット記事に、植松聖は強制措置から病院を退院して、生活保護を受けていたと書かれていたはずである。

  ⇒  https://news.yahoo.co.jp/byline/shinodahiroyuki/20160910-00062065/

生活保護を受けたことがなぜ今の時点で取り沙汰されているのか?

興味をもって「植松聖 生活保護」でネット検索したらヒット件数が凄い。どうやら今年の8月1日以降にその事実が判明したことになっている。大手新聞では朝日、産経のニュースサイトで確認したのみだが、情報源は「関係者への取材」でわかったということしか書かれていない。事実関係の信憑性について裏付けるような詳しい情報はほとんどなかった。

(考えてみれば、東京新聞でも、植松が退院後から犯行に及ぶまでの詳しい経過を追跡したような特集記事はない)

そのほかの記事は、植松を信奉して裏切られたと思ったのか、逆上して植松聖をこき下ろす記事、植松の非道を許さない感情がさらに膨らんで無茶苦茶なことを書いている。

彼らの書き込みで初めて知ったことがある。生活保護のことを「ナマポ」と表記していたのだ。いかにも受給者を揶揄うような、人を馬鹿にした耳に触る音感である。

「税金を無駄遣いする、社会の役に立たない、そんな弱者は切り捨てろ」と、彼らは本気で主張しているが、やはりトランプの影響が強いのか日本でも差別的言動やいわれのない偏見が多く見受けられる。

それにしても植松聖が犯行時に生活保護者であったことは、少なくとも去年9月の時点で明白であった。それが何故、いまごろ新事実として話題になっているのか?

これはあくまでも推測である。内部からの情報リークではないか?

「創」のサイト記事をもう一度読みかえし、植松の行動を確認した。

植松は施設に勤務しながら安倍首相と衆議院議長宛に手紙を書いた。その内容から警察が動いた。内田樹も書いていたが「権力者を挑発するための犯行予告ではなく、自分の行為が政権と国会多数派には好ましい」行為であり、「同意と保護を得られるだろうという趣旨」の内容の手紙だった。そんな理不尽な殺人予告そのものが前代未聞だし、常軌を逸した男と判断して警察は動いた。植松は施設を辞めさせられ、強制措置入院させられた。

問題は、退院後から急激に動く。金に困っていた植松は、生活保護を受けることになる。自宅に住み、自家用車にも乗っている。両親とは同居していないが、教師と漫画家であり収入はそれなりにあるはずだ。

なのに、ハードルの高い生活保護を申請して、それが短い期間でなぜ許可されたのであろう。担当部署は相模原市なのだろうか、普通では考えられないことだ。

「創」の記事にもあったが、警察は植松を単なる精神障がいと判断したのか、彼を病院に押し付けたような感じだ。(警察は、精神病者を署内に拘置することを極端に忌避するという)

生活保護申請がスムーズに受理されたのも、警察から施設そして病院への経緯のなかで、何かの関与があったのではないか?

植松が殺人を予告し、実際に大量殺戮の準備していた段階で、第三者が気づき未然に防ぐことは出来なかったのか? 

以上の反省や悔悟などが今日に至るまでに、何一つ表面に出ないことに憤りを感じた関係者の誰かが、もう一度その疑問を投げかけるために植松が生活保護が受けていた事実を感受性の鈍い大手メディアにリークした・・。

そして、すかさず植松のシンパや反植松の若者たちが飛びついた。「植松はナマポだった」と・・。



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