小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

耳の中の声

2005年05月24日 | エッセイ・コラム
たくさんの蝉が鳴いているような声。
高周波のような音が重層的に脳の内側から聴こえてくる。
キーキー、シャーシャー、ジージー、ピーピーの音が混交している。
幻聴であることは間違いない。だいぶ前は深夜寝静まってから、それは聞こえてきた。
今は耳を澄ますというより、聴こうと意識すると必ず聴こえてくる。
電波の音が聴こえてくるのだ思っていたこともあった。
これは科学的にありえない。
昔、覚せい剤常習者の通り魔殺人犯が「電波の音が聞こえてくるから・・」というのが殺人の動機だと証言していた。
それが頭にこびりついていたのかもしれない。
覚せい剤はやったことないが、葉っぱは若いときに経験ある。(海外です)

なにげなく寺田寅彦を読んでいたら、私と同じ現象で悩んでいたではないか!
その部分をちょっと引用する。

「頭を左右にねじ向けても同じように聞こえ、耳をふさいでも同じように聞こえる。これは「耳の中の声」である。
平生は、この声に対して無感覚になっているが、どうかして、これが聞こえだすと、聞くまいと思うほど、かえって高く聞こえてくる。この声は、何を私に物語っているのか、考えてもそれは永久にわかりそうもない。しかし、この声は私を不幸にする。もし、幾日も続けてこの声を聞いていたら、私はおしまいには気が狂ってしまって、自分で自分の両耳をえぐり取ってしまいたくなるかもしれない。」


寅彦をまだ全部読んではいないから、彼がこの個人的問題をどのように解決したのか、或いはずっとそのままであったのか分からない。
脳の聴覚野における神経の問題なのか、心因的な問題なのか、その音たちは何所から来るのか分からない。
私の場合「気が狂ってしまって、自分で自分の両耳をえぐり取ってしまいたくなる」ようなことはないから、当分この状態が続くだろうし、この音たちとうまく付き合っていくしか方法がないのである。
どなたかこの現象に明解な解説をしていただけたら有難いのだが・・。


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