小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

アメリカン・クール

2009年01月26日 | 国際・政治

 ユーチューブでオバマの大統領就任の演説をみた。まず、そこに居合わせた200万人以上の人々の集合、そのビジュアルの物凄さに驚いた。これだけの人々が集まる映像は初めてだ。ウッドストックの比ではない。大都市なみの人口がすっぽり収まる広大な会場があることにも驚く。そして、大勢の人たちが一様に静寂を保ち、身じろぎもしない。ある決意をもった社会的紐帯を目の当たりにして、私はこれまでにない感動を覚えた。大統領の就任式はある意味で祝祭空間を現出するものと思われたが、緊張感のある静謐さのなかで、一人の男の声に耳を傾けることは、例外的なスペクタクルともいえる。

 オバマの第一声は「My fellow citizens」だった。市民の複数形。ケネディも使った含蓄のある言葉の選択だ。後で翻訳された全文を読んだが、抑制のきいたトーンでアメリカの建て直しをあらゆる角度から検証し、市民的教養をもつ誰もが受容できる言表だったと思われる。さらに、選挙遊説のときのような共感を呼び起こすような情動性もない。抽象的な文言が多いと思いきや、建国の精神の意義、人種差別、戦争による犠牲などアメリカが直面したさまざまな問題、現在のグローバル金融経済の危機的状況を克服すべき新たな政策、産業の転換など具体性に富む。

一方では価値観の速やかな変換、悪弊の一掃、「応答=責任」の重要性など、公共哲学的な思想のエッセンスを彷彿とさせる表現も盛り込まれる。27歳のスピーチライターが書いたと言われるが、たぶんあらゆる社会科学の最先端の学知を援用したのではないか。したがって全体を端的に要約できないほど内容が詰まった演説であったが、反面、総花的ともいえた。そのほか、選挙中のキーワード「Yes,We can」を一度も使用しなかったことはオバマの品性を感じた。

 最後に、オバマだけでなく、彼を選んだアメリカの人々。あなたたちはクールだ、かっこいいぜ。

 気になることが一つ。オバマが以前から述べていたことだが、アフガニスタンに拘ることである。

 それがテロ根絶という国際平和秩序戦略なのか、戦争継続によるアメリカの国益の維持なのかが分からない。イラクからの撤退した分をアフガンに注入するらしいが、ヒラリーを国務長官に登用したことにともない、そのリスクはかなり高い。私はこれをオバマの本意とは思っていないが・・。

 今回は日本の政治とは比較しまい。愚痴っぽくなりそうだから。


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