小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

時里二郎の詩集を求めて

2019年02月28日 | まち歩き

時里二郎が去年上梓した『名井島』は、高見順賞と読売文学賞詩歌俳句賞をこのほど同時受賞。そのせいか、「時里(ときさと)」というあまり聞いたことのない名前は、俄かに脚光を浴びているだろうし、その詩集の高評価の書評も、二・三ほど目にとまった。

とまれ、小生はひねくれもの、時里二郎の詩集そのものを未読ゆえ、最新作『名井島』ではなく、前作あるいは前々作から読んでみようと企んでいた。

但し、前作の『石目』はアマゾンでは1万円を超えるほどの値で売られている(まさしく、時里二郎は注目されつつある証左といえる)。だから、前々作の『翅の伝記』若しくは『るしおる』という作品なら御の字だと・・。それは新刊なみの価格ほどで流通し、小生にもなんとか手が出せる。このあたりで落ち着くのが自分にふさわしいと、しおらしく思っていたのだが・・。

内心すべてを諦めていたそのとき、「古書ほうろう」にて時里二郎の本を見かけたという人がいた。一日、二日前のことだからまだ置いてあるかも、と嬉しいことを言ってくれるじゃないか。

さらに、「古書ほうろう」さんは3月末に池之端に移転する、との情報を授けてくれた。先だっての「古書信天翁(あほうどり)」の閉店、「古書木菟」のオープンなど、いわゆる「谷根千」エリアの古本屋事情は、なにやら胸騒ぎがつのる。

最近、ご無沙汰だったこともある。いい機会であると思い、「ほうろう」へ向かった。

道灌山の「ほうろう」は、移転につき3割引きのセールを実施していた。そのせいか客は思いのほか多く、ゆっくりと本を探せない。で、店主の宮地さんに詩人の名前を言うと、しばらく宙を見上げて後、なにやら確信を得たのか、まあどうぞこちらへと案内していただく。

詩・歌句集のコーナーは、いつのまにか予想を超える充実した品ぞろえになっていて驚いた。移転後はどんな店になっているのか、楽しみがまた増えた。

礼をいって独りでじっくりと、棚の本を吟味していると、それは5,6分で見つかった。そのひとときの、わくわく感は形容しがたい。

秘めやかに上品に、頑張って他の詩集にまぎれもしないで、『石目』は白く輝くように見、屹立していた(ちょっち熱が入り過ぎかな)。比較的美麗なうえに価格は1400円、それが3割引きで入手できた。

▲時里二郎の散文詩集『石目』。下は「ほうろう」さんオリジナル・イラストのPカード。移転記念として、最後の一枚をいただく。

 

▲カバーをはずしたら・・。装画は、柄澤斎さんで、堀田善衛、ネルヴァル全集、矢川澄子作品集などを手がけた画家・版画家。愚生と同年であり、なにやら因縁めいたものを感じる。

 


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