小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

ベトナム・カンボジアの旅3

2006年09月20日 | 旅行記

夕方、ハノイからシェムリアップヘ、空路約2時間。
空から見たカンボジアは、地上の明かりがほとんど見えない。
着陸態勢に入って空港に近づいているのに、人工的な光は点在するのみで、薄闇のなかで大地の気配しか感じられない。中国の雲南省に行ったときと同様な印象をもった。
シェムリアップ空港は大きな体育館ほどの造りだが、温かい煉瓦色とシンプルな建築デザインは好ましく、カンボジアに来たなという感慨を抱かせる。空港内は人気も少なく閑散としていて、外国人相手に何かしら売り込もうという雰囲気がまるでない。「いいぞ、いいぞ」と、心の中で思う。
ベトナムでもそうだったが気温は30度くらい、夜になれば25度程度。湿気はあるが、8月の日本より断然過ごしやすい気候だ。ちなみに40度にもなる酷暑は4,5月だそうだ。

外にでるとガイドさんは、すぐに近寄ってきた。28歳の好青年で、白いワイシャツと黒ズボンで学生のようないでたちが清々しい。ただ聞き取りにくいほどの早口で日本語を話し、独特のアクセントでかつ文法的におかしいところが多々ある。今後お世話になることもあるし、初対面ですぐに理解しづらいとは言えない。
日産の自家用車でホテルへの道行でのこと。
「もう少し、ゆっくり話してくれ」と頼むと、「やゎかりました」という。でも自分のペースを変えることはできない性質みたいだ。
近々日本に留学する予定があり、新聞配達をしながら勉強したいという。
と言いつつ新宿や池袋の繁華街にも興味があるようす。
「どうしてだい」と聞くと、「若いギャルが大勢いるじゃなーい、若い女の子っていいじゃなーい」とのたまってゲラゲラ笑う。私たち夫婦が笑わないでいると、「波田陽区しらないですか、っていいじゃーないは、今日本で人気ですよね」という。もう彼の人気は終わったとは言えず、それに「いいじゃなーい」は、「って言うじゃない」である。
実はこれは後で気付いたことであり、この「いいじゃなーい」はその後、私にも乗り移って二人で頻繁に言うようになる。これには妻も苦笑するしかなかった。
フランス資本のホテルに着く。広い敷地に亜熱帯の植物が生い茂り、池には蓮の花が咲いている。ロビーでは生の伝統音楽が奏でられている。アンコールワットに入るためのパスポート用の写真を渡してガイドと別れ、穏やかな微笑みをたたえる中年の男性に部屋を案内される。妻の要望で最高級のホテルにしたのだが、インテリア、雰囲気、バルコニーからの眺望、サービスはパーフェクトであった。ちなみにこのホテルチェーンは日本では湯島の池之端と名古屋にしかないらしい。

ホテル内では多くのカンボジアの人々が働いている。その誰もが慎み深く微笑みをたやさない。そして気忙しくなくゆったりとしている。ある種の人間的な寛大さや余裕さえ感じさせる。これがホテルの経営方針だとしても、彼らの物腰はあくまでも生得のものだと思いたい。
明日から2日間でアンコール遺跡を歩く。いろいろな思いを抱きながら深い眠りにつく。


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