小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

六本木で、水墨画

2016年03月09日 | 芸術(映画・写真等含)

 

むかしお世話になった広告デザイン会社の社長から葉書をいただいた。描いた水墨画が六本木の美術館に陳列されているので、ご覧されたしとのお知らせ。作品が総務大臣賞を授賞したと小さく記載されていた。年賀状をやりとりするだけのおつきあいになったが、妙に懐かしくなって、もしかしたら再会できるかと思い、夫婦で久しぶりに六本木へ行った。

トルコ料理を食べたり、芋洗い坂を歩いたり、富士フイルムの博物館やらギャラリーで開催していた「野口健×藤巻亮太 100万歩写真展」を覗いたりと、久々の六本木ぶらり散歩。往来の歩く人たちが颯爽として、ビジネスマンらしき外国人も増えたなと思った。ヒルズ、ミッドタウン、そして国立新美術館と、話題になった建築がリードしたせいなのか、オフィス街っぽく全体が様変わりしているようだ。ホテルアイビスの後はなにができるのか・・。

昼間だったので、六本木特有の猥雑さ、解放感がすっきりと希釈されて、ヘンに洗練されているような感じがする。「ジョージ」「ボディ&ソウル」はとっくになくなってしまった。「六本木交叉点」に象徴されるかのごとく、ここは様々な人間・人種が交錯する。男と女の、それも欲望がらみだけの「交叉点」ではなかったはず。いい音楽や酒、旨い料理もあるだろう。だが、私にとっては遥か昔のことになってしまった。

乃木坂駅ちかくの居酒屋、「ハンナ」の看板は健在だったが、ジョージのママに似た女主人はまだ元気であろうか(4年ほど前にお邪魔した時、ずいぶん老けた印象だった)。

 

                             

▲富士フィルムスクエアのギャラリーで開催されていた「野口健×藤巻亮太 100万歩写真展」。無料で鑑賞でき、作品も撮影可。拡散してほしいとのことだった。



 ▲国立新美術館外観 黒川紀章畢竟の最期の設計 外も中もゆったりとした、贅沢なスペースだ。

 

目当ては全日本水墨画秀作展であるが、「汎美展」(絵画)「創玄展」(書)も併設して展覧。そのいずれもが無料である。同期間に、各団体が主催したもので、たぶん会員の殆んどが参画した美術展であろう。私は水墨画(3階のみ)しか見なかったが、1階から3階までのスペースを占有した大規模なものだった。水墨画展には何百点もの作品が出品され、明らかに初心者の筆になる画から芸術家の逸品までの玉石混交。月曜日だったこともあり、閑散としてゆったりと拝見した。

お世話になったS氏の作品はすぐにわかった。水墨画のテーマとしては、かなりの斬新なイメージではないか。年賀状の印象から、「書」のカリグラフィを延長させたものと想像していたが・・。

手法としてはシュールな近代画であろう。私よりもちろん十歳ほど年上だが、悔しいかな、感覚が若々しいし、他の作品よりもチャレンジングだ。このへんが授賞理由か・・。高市総務大臣が直截にみて判断したとしたら、なんとするか。いや、それはS氏にはなんら関わらないことだ。ともあれ、これだけの作品群のなかから選出されたのだ、S氏の精進を称えたい。

 

 ↑ 映り込みがあるため、作品に悪影響をあたえてしまった。あしからず。

 

 私は鑑賞する方の専門で、絵を描いたりする才能がない。絵画でも写真でも、先生といわれる方から手ほどきを受けたいとは思う。幼少の頃は絵画、書道教室に通ったことはあるのだが・・。アントニオ・ロペスの時にも書いたが、芸術家という師について、物を見る、対象をどのように把握するかという方法、技を学びたいとおもっている。そのこともあり、偶然を装ってS氏にお会いしたかった。そんな下ごころ、魂胆もあったのである。が、残念ながらS氏は不在であった。私の方からお会いする機会をつくらねばならぬ。年齢に臆することなかれ、前向きにチャレンジングで行こう。

 

         

 ▲多くの作品のなかで、気になった私好みの作品。

 

家に帰ってから、自分なりに水墨画について考えてみた。小林秀雄の「鉄斎」を再読しようと思った。長くなるので、稿を改めて書くことにする。

 


 

 


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