小寄道

日々生あるもの、魂が孕むものにまなざしをそそぐ。凡愚なれど、ここに一服の憩をとどけんかなと想う。

マイナンバーカードの怪

2023年05月10日 | 社会・経済

病院は夜 9時が消灯。しばらくはテレビを付けているが、大部屋の皆さん(3人)は静かに、おもむろに就寝につく。それからは、ラジオを聴くことが多い。

先日、武田砂鉄のラジオ番組を聴いた。前回の入院の時に、2,3回ほど聴取したかな。内容は忘れたが、低めの落ち着いた声が聴きやすく、言葉使いが的確で気持ち良い。故坂本龍一の父親がいた河出書房新社の編集にいた(現在フリー)が、鬼の坂本から薫陶を受けたのだろうか…。

以前、Eテレの「百分で名著」で、社会心理学の嚆矢『群衆心理』を解説していた武田砂鉄。この古典は、現代のSNSにも通じるものがあり、それは人間の本質的な行動原理や心理の動きを、はじめて分析したといっていい。まさに、温故知新。そんな印象を強く持ち、武田砂鉄という人の本を読もうと思ったことがある(文庫本を買ったが…)。

🔺参考画像。Eテレ「百分で名著」、斉藤幸平に刺激され、いま自説の「資本論」を構想中。『群衆心理』もビデオに録るほど学び欲求刺激された。退院したら武田砂鉄入りの画像を追加したい。

▲「百分で名著」における『群衆心理』を解説する武田砂鉄氏 物腰は柔らかいが185㎝の長身とのこと。

フランス革命は歴史的な市民革命とされているが、その内実を社会心理学的に読み解いたのが『群衆心理』の著者ル・ボンである。彼は、その時の市民たちの行動を次のように分析した。「衝動的、暗示を受けやすい、誇張的で単純、偏狭で横暴、ある種の徳性をもつ」、最後を除き、いずれもがネガティブだが、これらは今のSNSの特長と重なるという。

 

とまれ本題に戻ろう。その夜のテーマは「マイナンバーカード」(以降、マイナカード)であった。小生、これに関しては胡散臭く思っていて、今のところ申請すらしてない。

さて、武田砂鉄の言い分は、「ほぼ全国民に到達した」という総務省の大臣か次官の発言を取り上げて、実際のデータを確認したら約76%の達成率で、この「ほぼ全国民に到達した」という表現は、たいへんな誇張だと揶揄し、それからマイナカードの成立や普及について、あれこれと面白く個人的意見を述べていた。

納期までに百個作ってくれと頼まれ、76個しか作れずに、ほぼ全部できました、だなんて言いぐさは噴飯ものだ、と。

ここからは武田砂鉄から離れ、文責は小寄道(小生)にあるが、専門家ではないから事実認識等に間違いがあるかもしれない。予めご了承願いたい。

ともかくマイナカード普及の経緯には、お上の権威を傘にした何か強引なやり口を感じる。当初は任意だったのだが、来年は「義務化」されるのだ。しかるべき法制化の手続きがあったとしたら、それを公的文書としてすべての関連書類に銘記されなければならない。

後に確認したが、先の76%の話は、到達率でも達成率でもなく、申請率の数値であった。つまり、まだ手元にマイナカードを持っていない人も含まれている。申請しても、書類が不備だったら、再度申請しなければならない。このカードは、何歳から申請できるのか、親のいない子供は取得できるのか?

マイナカード普及が遅滞している大きな理由に、本名を記載する、或いは口頭するというものがある。ある論者によると、日常的に「日本名の通り名」を使う人たちつまり在日のかた韓・朝・中の帰化した人々は、マイナカードを忌避しているのだという。

将来、それらの若い人たちに向けて、改名しなければ、帰化させない、と。そんな狙いがあるとしたら、日本はアイデンティティまで奪う、不自由な国ということになる。それとも、マイナカードの立て付け、設計図の欠陥が露呈しただけなのか。

まだある。マイナカードには証券会社と取引するための口座開設(権)が付与されている。これはなんだろうか? もしカードを紛失して誰かが知らぬ間にどうにかする、つまり口座を自分勝手に使う、なんてあり得るな…。

マイナカードの使用で、いちばん大事なポイントは、すべて4桁の暗証番号でやり取りするということ。普通なら、皆さん共通の番号を使うと思う。医療保険証、運転免許証なども、マイナカードに一本化されるから、暗証番号ひとつで、個人情報をごそっと持っていかれるリスクが生じる。

欧米では、アイデンティティの証明などにマイナカードに似たようなカードを使う。だが、個人情報を大切にする彼らは、それなりのセーフティネット、セキュリティが万全だから安心して、そのカードを使うと思うのだ。

小生は50代まではほとんど病院通いしたことない。歯医者は何度もあるか…。だが、55歳を過ぎてから、健康診断の何かで色々とひっかかるようになった。で、病院に行き、健康維持のためにクスリを処方される。定期的に薬局にも通うことになったのだ。

言いたいことは、マイナカードは常時もっているほうが便利になる。つまり、財布に他のカードと一緒に収める。高齢者は、大切なものを置き忘れたり、落としても気付かない。この傾向は、歳を重ねるごとに確率は高くなる。だから、マイナカードに一本化するのは、リスクがより高くなると予想できる。まして、公的な個人認証とやらを、民間のサービス会社に丸投げするそうな…。

今回のブログも入院中のためスマホで執筆しているが、妻にもチェックしてもらっている。そこで指摘されたことがある。「早期申請者には、なんで税金を使ってまでポイントを賦与させてるのよ」と、来たもんだ。いいじゃないか、上等なツッコミだ。

マイナカードには国民にとって多大な利点があるか、まったく自明ではない。一方、官公庁には、そこはかとない利益が見えている。おかしいじゃないか。で、以下のようにかんがえざるをえないのだ。

デジタル庁の新設、マイナカード運営のために、総務省傘下の様々な民間企業が参画、起業するだろう。それらを監督する特殊法人も2,3できそうだ。要するに、お役人さまの天下り組織の創成である。これが大きな彼らのモチベーションであるし、省益&官僚の退職後保障を優先させた、大きな闇の力となっている。いやはや、マイナカードはそうとうに奇々怪々だ。

最後に、ル・ボンの『群衆心理』を思い起こしていただきたい。約250年前の一般ピープルの行動原理、心理分析がなんだったか。三つ当てはまったな。

「衝動的・誇張的で単純・偏狭で横暴」、今回の政治家&一部の官僚たちの「群集保身心理」そのものですね。飛んだオチが着きました。お後がよろしいようで…。

 

追記/これを書いた翌日、システム全般の不備だろうか、あちこちで障害、エラーが出たようだ。これを報告した加藤大臣は、入力ミスとか委託会社の間違いなどと、すべて責任を転嫁する発言。自分たちの責任については、一言も言及しなかったな。昨夜、武田砂鉄の放送があったが、彼も同じことを指摘し、その辛辣さ加減がなんか気持ちよかった。(5/13日、記)


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