鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

230 立春の独宴

2022-02-03 13:34:00 | 日記

以前鎌倉宮の節分会と鬼門守護職の儀式は紹介したので、今回は明日の立春(我家の新年)の儀の用意をお見せしよう。


今年は疫病禍と各人の都合で私一人の旧正月だが、かえって隠者の秘儀を執り行うには静かな方が有り難い。



(源氏物語梅が枝 土佐派 江戸時代)

古の源氏絵を飾り古伊万里金蘭手の吉祥紋を散りばめた皿碗を用意した。

料理は明日作るので器だけでの撮影だが、雰囲気だけは伝わるだろう。

当日はまずお清めのあと古儀に従い國褒め(お国自慢)の歌を詠み、その後はゆっくりと我が楽園の草木花鳥達と共に春の宴を味わいたい。

病で皮下脂肪をほとんど失くしてしまった身には殊更寒さが身に染みるので、花咲き鳥が歌う春到来の有難さは年々増して行くばかりだ。


何は置いても我家の立春の玄関にはこの絵の他は考えられない。



我が師奥村土牛の富士(リトグラフ)さえ飾れば、それだけで家の品性が高まる気がする。

土牛師は毎年正月には横山大観の「天霊地気」の書幅を掛けて、その前で小一時間対座していたそうだ。

私もそれに習って師の一言一言を思い返しつつ、明るく浄らかな画中の初富士にしばし浸っていたい。

我が年頭の精神の清浄を保つのにこれほど良いアーティファクト(聖遺物)はない。


明日の國褒めの歌の下準備に近所の早咲きの梅を見て来た。

歌は出来たら次回にでも御披露しよう。



我が荒庭の椿も咲き出し梅のつぼみももう少しで開きそうに膨らみ、耳を凝らせば時折り藪の中から笹鳴きが聞こえる。

立春は我が楽園の生き物全てと喜びを分かち合える時だ。


古今東西たとえ疫病禍にあろうとも民草が春の祝賀さえ自粛する国など無かったし、東南アジアや中国の春節の華やかな様子をネットで見るにつけ我が国の凋落振りが思われるが、世捨人が世俗の心配をしても始まらない。

我が事を為すのみだろう。


祝迎春。


©️甲士三郎


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