鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

211 生花と書画

2021-09-16 14:36:00 | 日記

花の絵と合わせて生花を飾るのは滅多にないが。書や水墨画には生の花はなかなか良いと思う。

今年は前述の大放出時に気に入った詩や水墨山水画が数多く手に入ったので、四季の色々な花を合わせるのが楽しみだ。


写真は田能村竹田の漢詩軸に秋の草花。


詩の「秋径の下」に合わせて竜胆と水引を活けた。

自分が解読出来ない個所も、花で隠してしまえば安心出来る。

詩中の景に咲いていそうな生花を飾れば、俄然と詩の世界に入り込み易くなる。


石田波郷の代表句「吹き起る秋風鶴を歩ましむ」の軸は、芒の影に掛けてみた。


芒が風を誘うようで気分が良い。

書でも特に俳句は季語に応じて四季それぞれ掛け替えて楽しめるのが最大の長所だ。

隠者は虚子や秋桜子らを中心に戦前の句を集めているが、残念ながら知り合いの俳人達は名句の色紙や短冊でさえ買う人は滅多にいない。


彩色の絵に生花を取り合せるのはやや難度が高い。


絵は小山栄達の「嵯峨野之月」。

この場合は茶緑が主色の絵に対して、補色となる赤い曼珠沙華と火色の出た古伊賀の壺を選んでいる。

破壺(やれつぼ)は秋草枯草の風情を高めるのに最適な上、傷物なので安価で買えるのが隠者にとっては嬉しい。


©️甲士三郎