前回に続きブックハンティングの詩歌編(俳句は何度かやったので省く)。
詩集歌集は何度でも読み返し愛唱できるので、猟書家の恰好の獲物となる。
まずは詩集から。(以下の写真は一応全て初版本)
明治大正頃の詩集は凝った装丁が多く、木版の挿絵なども豪華だ。
手前の蒲原有明と薄田泣菫の格調高い象徴詩は殊に隠者好みだ。
本立て左のぼろぼろの背表紙が堀口大学の「月下の一群」、隣が上田敏の「海潮音」。
さらに右に並ぶ島崎藤村も晩年湘南で静養していたので、御近所の住人と言えよう。
次は句集と共に昔から集めていた歌集。
吉井勇、北原白秋、吉野秀雄ほか最も多く集まったのが与謝野晶子だ。
与謝野晶子は鎌倉の住人ではないが頻繁に訪れていた。
隠者に取ってはあまりに高価な「みだれ髪」以外は初版で揃っている。
夢二の木版画の表紙は吉井勇の「祇園歌集」で、京都で遊び回っているのが気に入らないが何せ伯爵様だから仕方ない。
鎌倉の地元民として忘れてはならないのが文芸誌「苦楽」だ。
戦後間もなく鎌倉文士や画家達の協力で出来た当時としては豪華な月刊雑誌で、特に鏑木清方の表紙は名作揃いだった。
清方記念館は近所なので買い物がてら寄れる。
「苦楽」表紙の原画展の時は思いのほか人気が高く混んでいた。
禍々しき俗世を忘れて夢幻界に浸るのに、古き良き時代の詩集歌集ほどふさわしい物は無いと思う。
特に詩集は今年入手できた物が多く、これからの長い夏を引きこもってじっくり読むのを楽しみにしている。
©️甲士三郎