12月の花屋はクリスマス飾りばかりで隠者好みの和花は少ないが、谷戸の散歩道には山茶花や石蕗などが薄日にひっそりと咲いている。
中でも冬菊は鎌倉の路地の遠近(おちこち)によく見られる。
秋桜子の「冬菊のまとふはおのがひかりのみ」は、隠者が若い頃感じ入った句だ。

冬菊(寒菊 枯菊)は下葉を枯らせながらも咲く風情が何とも隠者好みで、終末の季を象徴する花として珍重したい。
花時も長く色の種類も豊富にあり、冬の散歩道を彩っている。
また谷戸の古びた日本家屋に良く似合い、世に隠れ住む者達に寄り添う花だ。
冬陽を背に枯れながら咲く姿は、世捨人の自画像のように思える。
ーーー冬菊は小鬼の如く朽ち行くも 半身を捩り花を保ちぬーーー

写真のフォーカスが甘い所は、病眼な上にほぼ100年前のMFレンズなので御勘弁願おう。
野菊は菊慈童の故事では不老長寿の仙薬となり、隠棲の草庵には欠かせぬ花だ。
増してや霜雪に耐えて咲く冬菊の露滴なら、薬効も一際高いかも知れない。
日が落ちて苔むした石の間に寒そうにうずくまっているのもいじらしい。

このニ色のグラデーションがある小菊は、我が荒庭にも一株欲しいのだがなかなか売っていない。
暖色系と寒色系の2株があれば、閑居も満足出来そうだ。
冬菊は枯れ果てた庭の離俗の結界となり、冬籠りの世捨人の良き友となってくれよう。
©️甲士三郎