鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

170 寂光の落葉

2020-12-03 13:43:00 | 日記

自粛自粛で12月に入っても今年はちっとも忙しくはならない。

そもそも歴史上忙しい隠者など存在しないのだ。

まあ、おざなりに家の掃除と片付けくらいはやろうと思っている。


今日は荒庭の最低限の手入れをしようと外に出たのだが、大量の落葉を拾って来て床の間に撒き散らすのも美しいのではと思い立った。

………のだが後の掃除が大変そうなので数枚に留めておいた。


(絵唐津の片口茶碗と徳利 幕末〜明治時代 水墨花鳥図屏風 室町時代)

大き目の落葉を敷いて徳利に櫨の実を活け、極月の冷え枯れの茶を味わおう。

枯淡の極みの室町水墨画を背にして、落葉に残る黄や緑の潤いが如何にも美しく思えるのだ。

唐津の鉄絵も枯れた筆致で合っている。


枯葉は珈琲にも似合うが少し趣向を変えて、葉に色の残る小枝を活けた。

ーーー部屋冷えて名残の色に活けし葉の 薄明かりして枯れ際を待つーーー


現代作家諸氏の茶器と小壺に、燭の暖色の陰影により重厚感が加わった。

落葉や枯葉の色は夏季の緑よりも明度は高く、薄暗い茶室の中ではほんのり寂光を放つ。

取手の無いカップを使って、掌で温もりを包むように珈琲を楽しもう。


鎌倉には京都の紅葉ほどの派手さは無いものの、自然の雑木が多いので初冬の薄日の中で滋味のある色彩だ。


我が荒庭の葛葉の彩りも、散り際の今週が今年最期の華やぎだろう。

災厄の年も自粛で出来た暇を楽しみつつ、この極月を過ごそうと思う。

ーーー禍年の庭荒れ果てて掃かねども 積もる落葉は自然に消えるーーー


©️甲士三郎