気候変動で春秋が2週間づつ減り、その分夏が長くなった気がする。
各種の花の咲く時期を昔と比べると、この10年は明らかに花期が変わってしまった。
その結果私の苦手な夏が5月から10月までの6ヶ月間にも及ぶので、処暑の方策をあれこれと強化する必要がある。
夏の鎌倉の気温は東京より4〜5度低いが、湿度は高いので鬱陶しさは大差ない。
暑さや湿度そのものはエアコンや冷蔵庫に頼れるが、精神面が脆弱なので取り敢えずは日々の茶事の清涼感を上げて心の安寧を保ちたい。
午前のお茶は明るい水色や青緑色の花器茶器を使い、清らかな色の結界を築いて暑に抗するのだ。
少し前にファイアーキングのジェダイ色のマグを紹介したが、アイスティーなら同じファイアーキングでも一番人気の1950年代製ターコイズブルーのティーカップとプレートだ。
半透明のミルクガラスの効果で、上品で深みのある水色が出ている。
紫陽花を明時代の青磁花瓶に入れ水菓子の色も効かせれば、卓上の水色浄土だ。
この茶席なら我が荒庭の花精達も気に入ってくれるだろう。
遠出できない今は、庭先の小さな自然の有難さが良くわかる。
小雨の降りだした軒端の額紫陽花の上に、青揚羽が雨宿りしていた。
雨粒に撃たれたのか、翅が少し濡れて傷んでいる。
翔んでいる青揚羽は思いのほか速いので中々良い写真が撮れないが、これはじっとしているので哀れに思いつつも簡単に撮影できた。
晴れたら元気に翔び立てるかどうか、花精達に頼んでおこう。
夕食後のコーヒータイムには昼よりも重厚な雰囲気が欲しいので、古格ある中国陶磁が良いと思う。
元時代の鈞窯の花瓶と水差しに高麗青磁の筒茶碗で、700年間の星霜の染み込んだ青だ。
表面的な色だけなら現代陶磁器の方が明るくクリアーだが、近付いて観ると色の浅さが目立ち直ぐに飽きが来る
古い鈞窯や竜泉窯青磁は素地の茶褐色の上に、微細な気泡を含んだ半透明釉が何層にも掛かっていて深みがある。
紫陽花も普段は淡い方が私の好みだが、重厚な花器に合わせて濃い目の色を選んだ。
カナダのバードカービングの水鳥が、楽園の涼風を感じさせてくれる。
今後の人生の約半分が夏だと思うと身辺に涼しげな色の物をもっと増やして、例えばエーゲ海の隠者にイメージチェンジするのが良いかも知れない。
©️甲士三郎