鎌倉の隠者

日本画家、詩人、鎌倉の鬼門守護職、甲士三郎の隠者生活

145 短夜の白花

2020-06-11 13:57:00 | 日記

俳句の季語では夏の夜を「短夜(みじかよ)」「明け易し」と言う。

そのイメージは若い頃は徹夜仕事ですぐに夜明になってしまうような物だったが、歳を経てからの「短夜」は人生の青年期のように短く儚く熱い夜との認識に変わった。

ちょうど今はリハビリの散歩を人目を忍び夜明前にしているので、その短夜の風情を日々たっぷり味わっている。


散歩道のちょっと山に入った所。

ここは十薬の群落地で、木下闇に星辰のように咲いている。

小径が空中を行くようで楽しい。

ーーー暁闇に小()さき白花群れ灯り 道分け行けばやがて星までーーー


この時期の鎌倉はこの十薬や卯の花珊瑚樹の花など白い花が多く、我が楽園界隈も紫陽花が咲く前は緑と白だけの清楚な彩りとなっている。


脚の怪我も今週は軽い運動は出来るようになり、疫病もやや下火になりつつあるようで足取りは先週よりだいぶ軽やかだ。

落ちた筋力を早く取り戻したい。


気持が明るくなれば、風景もより美しく見える。

足元には十薬中空には卯の花、そして天空には有明の月が白く輝く。


ーーー明け易し残月撫でて去りし雲ーーー


引き篭りの2ヶ月で、地獄の混沌を呈していた部屋がかなり片付いた。

御近所も同じようで、毎朝集積所のゴミの量が多い。

物を捨てる事に爽快感を覚えるのは、物余りの現代日本ならではの現象だろう。

隠者なら極限まで所持物を減らしたいのだが、気が付くとまた増えている。

残生を美しい物だけに囲まれて過ごす為に、この際全ての物の取捨選択を突き詰めるべきだろう。

長雨の時期はその辺をじっくり考えながら過ごそう。


©️甲士三郎